ひとつ前のかどはさよならサヨナラ -9ページ目

別にそんな事
どっちでもいいじゃないか

と、言うような事に限って
どっちでもよくないらしいだ


僕は

どうでもいいねそんな事

と、正直に言うと
たちまち変人あつかいだよ

そんな事を話した事を思い出したよ

お前は笑っていたな
僕が変わっているのかな
実際はお前も変わっているのかな


ちょっと外れている

という感覚は
形を変えて大人と呼ばれる姿になってから
より感じるんだ



安心感への焦燥

家族も友達も愛する人達もいるというのに

どこかに存在する
そうした焦燥感がお互いを固く結び合わせていたのかも知れないな

だから

お互いがお互いを必要としていたのかとも
今、改めて感じるんだ

そう言えば
お互いがいるからダメなのかも知れない

なんてよく
電話で話した事もあったな

最後には
まぁ、楽しいからいいか

と結論に大体落ち着いてしまったけどな


それでもな
ちょっと外れている感覚を持ちながらも
お前は僕とは違い

物事を斜めに見たりせず
信じる事をやめない
熱さを持っているよな

ひとの問題を自分の問題として
ともに悲しみ
苦しみ
腹を立てる事が出来る奴だよな

心を許した人達を守るためであれば
その身を投げ出すお前は

その無防備なほどの純粋さゆえに
随分と傷つく事もあったのだと思うんだ

自分が相手に向ける
熱さを
相手に返してもらえない寂しさを何度となく味わってきたと思うんだ

お前の情は
まるで親のように深すぎて
熱すぎて
真っ直ぐすぎるから

だから

多くの人が返すべきものとも思わず
お前の優しさに甘えてきたのかとも思うんよ

そんな
風景を眺め、僕はいつも悔しくて
悔しくて
お前に対してすらも腹を立ててしまった事も少なくないよ

でも、同時に
お前はすごいなぁ
ともずっと思ってきたんだ


友達


そう呼ばれる楽しい時間の思い出を
日常に存在させられる事を
僕は今とても幸せな事だと感じるんだ

そんな事はどうでも
いいか(笑)

そんな
どうでもいい事だらけの僕だけど

とても

ただ

とても感謝しているんだ

電車を降りて
改札に向かうまで人混みに紛れながら階段を下る

駅の構造上
階段を下る真っ最中に
改札の
【むこう側】
にいる人々の姿を見る事になる

そこには
たくさんの笑顔や待ち人を待つ
そんな光景に溢れている

幼い頃も
同じような構造の駅の近くに
僕は住んでいた


会社帰りの
父さんは
かつて、改札の
【むこう側】
にいる
母さんと僕を、どのような気持ちで見ていたんだろう…

ふと頭によぎる

そして
改札の
【むこう側】
で人待ち顔を隠そうともせずに佇んでいる数多くの人々を
階段の上から見ていると
あの日あの時
僕と母さんもこんな風に人待ち顔をして
父さんを待っていたんだろか…

と不思議な気持ちにもなる


自分を待っていてくれる人がいる


それは、
嘘みたいにありがたい事なんだな

会社鞄を
握りしめながら
人待ち顔の人々の脇をひとりですり抜けていく
そんな瞬間

僕の心の内に湧き上がった
リアルな実感だった


あの改札口の様な
どこにでもある光景が

僕はとても
好きなんだけども…

本屋で
昔読んだ詩集を見つけて手にとったんだ

懐かしい一字一句に
初めて家出をした時を思い出したよ

些細な事で親に反発して【遠く】に行きたい
って、飛び出したんだ

ジャリ

なんて呼ばれるような年齢の頃だから、たかが知れた
【家出】だったけど


家出って
目的がないんだなぁってその時感じたなぁ


なんせ
暇なんだもん


でも
あの時に
夕暮れを眺めて
ずいぶん遠くに来たような気持ちが湧いたけど

同時に

【遠く】
って、不思議な雰囲気の言葉だなって感じたよ

実際は自転車で行けた
隣町レベルだったけどね(笑)

そんな頃を思い出しながら

リルケの詩集を買った


久しぶりに晴れた昼間に30を過ぎた僕は


近所の本屋で
リルケの詩集を一冊


何食わぬ顔で買ったんだ



それをまた丁寧に読みたいと思ったのは
僕の中に
居残っている

家出をした頃の僕の
かけらだと思う


本当に家出した頃の僕には


リルケなんて
全く必要じゃなかったのに

不思議だな

遠く…

あの時、
遠くに行きたい
と思った僕を思い出し

ある歌のフレーズが頭の中に流れたんだ

思えば遠くに来たもんだ~…

うん…

まだ30を過ぎたばかりの僕だけど

あの頃から考えれば


思えば遠くまで来たもんだなぁ

なんて、思うんだけど…