ひとつ前のかどはさよならサヨナラ -10ページ目


友の訃報を旅先で聞いたんだ

朝4時なんていう
非常識な時刻に最初の電話はかかってきた

もちろん就寝中だったから半分寝たまま
何回かの呼び出し音を聞く

携帯電話の通話ボタンを押せるほど
ハッキリ覚醒するまで随分かかってしまった様で
ボタンを押すと同時位のタイミングで電話は切れた

厭な予感はその時からあったんだ

二度目の電話は朝8時を過ぎてからで
今度は携帯を手にした瞬間に確信めいたものを抱いた


厭な予感ほど的中する


友達確かに大病を患っていたけど
ここ数年は落ち着いているように
少なくとも傍目には見えた

急逝
と、呼んでいいくらいの亡くなり方だった


携帯を手にした時には確信めいた予感を感じていたくせに
僕はどうしても現実味を持ってその報せを聞く事が出来なかった

外国にいるという事実が
そうした現実味の薄さに拍車をかけても居たのかも知れない

終始

はぁ…

そうですか…

なんて、鈍い受け答えをし続け僕は
通話を切ったその時ですら

これは間違いなんじゃないか…

なんて事をボンヤリ考えていたと思う

告別式の日取りは、奇しくも
マイアミで行われる友人の日取りと一緒だった

僕はのろくさとシャワーを浴びて
安ホテルの近くにある売店に向かった

僕には簡単な英語が通じる事を知っている売店のオヤジが

おはよう

とだけ、日本語で言った後に
いつまでニューヨーク滞在なんだ?

と聞いてきた

今日、マイアミに発つんです
あさって、友達の結婚式があるから

そう答えると
オヤジは不思議そうな表情になって言った

結婚パーティーに行くのに
どうして、そんな疲れた顔をしてるんだい?

僕、疲れた顔してますか?
反射的に聞いていた


あぁ…少しだけな

遠慮がちにオヤジは答えた

実は今朝
日本から電話があって友達が亡くなった、って言うんです

オヤジは驚きの表情を見せる


僕は日本に帰るべきでしょうか?

オヤジはしばらく…と言っても2・3秒だったと思う
考えてから全く持って簡潔に言った

間に合うのかい?

え?



今から日本に帰って、間に合うのかい?



そう言われはじめて、僕は時差や日付変更線の事を考えた



多分間に合いません



じゃ、間に合う方に行けばいいと思うけど…


まったくその通りだった

サンドイッチとコーヒーを持って僕はベンチに腰かけた
アメリカ独特のゴツいサンドイッチが喉を通過した時
少しむせた

むせた拍子に唐突に涙が出てきた



ひどいな、人が外国にいる間に急に死ぬヤツがあるか…

むせながら呟いてから
その台詞のあまりの身勝手さに我ながら呆れた

間に合うのかい?

オヤジは言った

時差や日付変更線なんて、
関係ない

もう間に合わない

間に合いなどしない

おそらく一生

もう間に合いなどしない

そう思ったんだ

思い出と呼ばれる、記憶の中で
友は笑っていた


ありがとう


もう一度むせ呟いた


添付
BELIEVE

twenty4-7
どうしようもない事は
どうしようもない

それは

分かっているはずなのに

どうしようもない事ほど
どうにか出来ないモノかと悩んでしまうんです

けれど

どうしようもない事は
どうしても
どうしようもなくて
胸が切なくなるばかり


どうしようもない事を

どうしよう
どうしようと

オロオロ迷って居るうちに

僕は

何を後悔するものか

笑いながら言っていた


何を後悔するものか

そう、
笑いながら言ってやる

悩みはしてもさ
悔やみなどしないよ

呆れかえっても
諦めまいさ


昨日は最早
昨日の過ぎず

今日は今日とて
明日を知る事すら出来ないんだ

明日も必ず
やがては昨日

何しろ出口は向こうの入り口
すべては途中の出来事で

終わりが始まるだけの事

何を後悔するものか

大丈夫

笑いながら
言ってやる
二十歳を過ぎたあたりから、不眠症が【主食】みたいなもので
その後に続く数年間

強迫観念
過呼吸


…様々な【おかず】が出てきた

その度に色々な人に世話になってきたよ

そんな僕の話しを聞いてくれた人の一人に
坊さんがいる

僕が職業とも生き方とも言えない、隙間風の様な生活をしていた
そんな時代に出会った
坊さんなんだ


ある日、外出する際
あれ?鍵を掛けて来たっけか?
なんて思う
かけてきているハズだ
と思う

でも、やっぱり不安で
もう一度、家まで戻る

こういう行為を何回も繰り返してしまうんだ

僕の場合
こんな強迫観念を生み出す原因には
一種のマイブームみたいなモノがあって
鍵ブームは比較的短期間で終わってくれて
助かったけど

超ビックウェーブを生み出した物があった

コーヒーメーカー

コーヒーメーカーの電源を切っていないんじゃないかって
確認する為に
事務所と家との間を四往復した

バカバカしい行為だとは判ってるんだけど
やめられないだ

それを当時
その坊さんにに話した

したら、坊さん
あっさり言ったんだ


四往復で終わったんですか?
良かったですね


このたった一言に
すでに薬効を上回るかも知れないほどの効果があったんだ


鬱はある日突然訪れる


思い当たる原因
原因と呼ぶよりきっかけかな…
を、見つけられる時もある

それは誰かが何の悪気もなく口にした
何気ない一言だったりする事も多いけど
もっと始末に負えないのは
他ならない
自分自身が口にした一言がきっかけとなって
躁鬱状態に突入してしまう時

さらにもっと始末に負えないのは
思い当たるきっかけが
何も見つけられない

そんなパターンもあるんよ

そんな躁鬱状態突入時に、ある言葉に出会った


友達をつくるな


これには疑問を持ったよ

僕自身
人を信用しない側面がある反面
友人の存在が途轍もなく頼もしく感じる時が
多かったからさ


そこで、また
坊さんにその話をしてみた

すると坊さんは即答したんだ

ありますよ
そう言う話する事


驚きを隠せない僕に向かって
坊さんは続けた


さすがに
友達をつくるな
と言うようなストレートな言い方はしませんが

やっぱり他人との人間関係って
もちろんプラスに作用する側面もありますが

それよりも負担、ストレスにつながる事の方が
多いですからね
判断は急ぎません


うーん…
と、噛み砕けない僕に坊さんは続けたんだ

人生時計って聞いた事ありますか?

今の自分の年齢を
3で割ってみるんです

僕はその時25歳で
割ると、8,333…

そうあなたは
まだ朝ですよ

これから色々な方達と出会うんです
急がなくても良いんじゃありませんか?

昼を過ぎてもきっと遅くはありませんよ
夕方でもです

妙にストンと落ち着いた

人生時計
悪く考えれば、いくらでも悪く考えられる
けど

妙にストンと落ち着いたんだ