ひとつ前のかどはさよならサヨナラ -28ページ目


うーん、例えばね
【生きる】って漢字
そいつははにかんだ笑顔で話す

えぇ!?どこが?

意外な答えに驚く僕に
またしてやったり顔でそいつは
楽しそうに答える

だって読み方いっぱいあるじゃん

【生きる】?
え~っと…
生まれるとか先生のセイとかショウくらいしかすぐに思いつかないな…

走る車の中で僕は【生】の字の他の読み方を一生懸命考えていた

あっひとつ思いついた
ナマ!

うんっうんっなんて
そいつは頷く

他にもまだあっかな~

負けず嫌いの僕を知っての事か

まだ、あるさ
なんて煽られる

最後は郊外にある儒城(ユソン)温泉の町を背にビールをかっくらいながら降参した

おもむろに友は言った

【キ】それから【生やす】それと…
【生る】

僕は自分のどこかがぐぐっと掴まれるのがわかる
【ナル】…

そいつはビールにを少し口をつけながら微笑みながら続ける

そう、『生さぬ仲』とか言ったりするっしょ

生さぬ仲なんて
つかわんなぁ~と思いながらも
言葉を駆使して意味を伝えようとする
日本語の存在に少し驚いた

世の中の為にとか
地球環境の為にとか
正直そういう大きな目標では、イマイチ僕の心に着火しない
そんな理由が少し自分でわかった気がした

そんな大きな目標よりも、こいつのため、あの人のため、って方が頑張れる

誰かひとりのために必死に頑張った事が
大きく広がっていく
そんなイメージ

人種とか肌の色とか宗教とか
習慣、そして言葉

そういうものを【超えて】つながるのでなく
人の心の奥底に流れている地下水のようなものでつながりたい
なんて思っていたら

ふっふっふ

となんだか笑けてきた

僕は今すごい事を考えてしまったのだ

なんて笑いながら言うと

何だよ、気持ちわりなぁ~
何思いついたんだよ教えろよ~
なんて笑いかえし聞いて来るのが、またおかしかった

夜景の美しいこの町、
いやこの韓国という国も日本同様いつまでも平和であって欲しいと心から思ったんだ


ストロングスタイル③②‐序 …7音色 七色目 『緑』終
添付 Yuki - プリズム




韓国は大田市(テジョン)の町中で、車窓の向こうにある看板を目にした

キャッチコピーに

【髪は人生のポッ】

と書かれていた

ポッ…?



ポォ…

男性用のカツラの看板で、文脈から考えて
ポッは【友だち】を意味する単語だった

僕の頭の中には長い間
友達=チングー
って構図があって、チングー以外の言葉が出てくるなんて聞いてないぜ!
なんて感じだった

車に同乗していた韓国人の友人は
僕がポッポッ繰り返す様子が面白かったのか笑い出し

何?あの看板そんなに気に入ったのか?

なんて冗談めかして聞くから、そいつの言葉に食ってかかるようにして僕は言った

ポッって友達って意味なのか?

そいつは少し驚いた顔をして言った

え…お前今まで知らんかったのか?

そいつの他にも僕は、幼少の頃から
長い間、日本暮らし韓国の友達が多い
日常的な会話なら多少、聞き取るには自信があった

知らんかった…

正直に告白すると、そいつは笑いながら

そうだな、チングーより少しカッコつけたい時、
お前が好きな詩の中に使うような言葉かもな

なんて教えてくれた

僕は韓国語はこれだから難しいよな

なんて言いながら座席に深く腰を沈める

そいつはそれを聞き逃さなかった
車のスピードは変わらない、
そんな穏やかな空気の中で彼は言った

日本語だって充分難しいよ

僕は、前を行く車からまたそいつに目を移し

え~、例えば?

なんて聞き返した

そいつは、反応を確認するとニコニコしながら
答える

うーん…例えばな…



続く

BUMP OF CHICKEN - 花の名


異国の街でバス停に立っていた

旅先では言葉に自分の全てを委ねない
そんなささやかな決め事の中で
バスが止まる

油をさしていない音よりエンジン音が大きくて、なんだかすげぇと
思った

乗りこむ時だった

バスに乗り現金硬貨を差し出したら、運転士に現地の言葉で何か言われ
乗車を拒否された

でも僕は言葉を理解出来ないから

これでは足らないのか?

なんて、全く見当違いな事を、身振り手振りと
中途半端な英語で硬貨を差し出す以外に手立てがなく一生懸命だった

けれど運転士は面倒くさそうに理解を示さず
押し問答の様な状態になってしまった

そんな時に
乗車口そばに座っていたばぁさんが、運転士に何事か早口で話しかけた

短いやりとりをした後で、ばぁさんは何か紙片のようなものを運転士に手渡す

そしたら
僕はバスに乗ることを許可されてしまったんだ

目の前で奇跡が起こったかのような感覚だった

もちろん実際は
奇跡でも何でもなかった

後になって知ったが
この国は現金でなく、バスクーポンを前もって
購入しておかなければ乗車出来ないシステムに近年改正された為、
随分前に手にした僕のガイドブックにはその事が載っていなかったんだ

クーポンなんて存在を知らない僕は
とにかく、
バスに乗れたのはばぁさんのおかげだ!
と言うことだけは理解出来た

だからばぁさんに対して
英語で感謝を伝えたんだ

彼女はそれに対して
笑いながらやっぱり僕にはわからない現地の言葉で何か言った

僕は
ありがとう
の一言さえ現地の言葉では言えないまま
その国を訪れた自分を猛烈に恥ずかしくなったんだ


添付 HY - あなた