パリ旅行の計画を勝手に立ててみた(理想編) | カラフルトレース

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明けない夜がないように、終わらぬ冬もないのです。春は、必ず来るのですから。

フランスへ行きたい。ただそれに尽きる。

わたしはフランスに行ったことがない。
厳密には、全く降り立ったことがないわけではない。中欧旅行時のトランジットがシャルルドゴール空港だったからだ。ただ、空港の中をぽてぽて歩き回っただけでは「フランスに行った」とは到底言えないだろう。そういうわけで、対外的な立場としては「フランスに行ったことがない」を採っている。

さすがに……さすがにさぁ、そろそろいいんじゃない?

というわけでリアルの友人たちを許可なく巻き込み、理想の渡仏計画を立て始めた。
普段、海外旅行で課しているノルマは下記の通り。

①教会に行く
②城・宮殿に行く
③劇場でバレエを見る
④美術館に行く
⑤そこでしか買えないものを買う
⑥その場所ならではのものを食べる

そして今回は特別ミッションが追加される。

⑦大学の前期課程時代のクラスメイトに会う
⑧大学の後期課程~修士課程時代のダチに会う

上記を全て詰め込んだ旅程に勝手に連行しようとしているのは、大学で前期課程から後期課程まで一緒だった友人である。彼女を仮にM氏と呼ぶ。
M氏とは修士課程で別の研究科に進んだが、その後も穏やかな付き合いが続いている。当然「前期課程時代のクラスメイト」も「後期課程以降のダチ」も共通の友人だ。
彼女が「たぶん広く芸術鑑賞が好き」ということは把握しているので、その一点に賭けて旅程を組んでしまった。
本当にごめん。イマジナリー同行者よ。

※バレエの公演日、美術館の休館日次第で順序入替の可能性あり


1日目:パリ到着

どのツアーを利用するかにも拠るが、13-14時くらいにシャルルドゴール空港に着くと仮定。
そこから荷物受取、入国手続き等を含め、ロワシーバスで中心部に移動、16時半にはホテル(サン・ラザール駅の近くを予定)に着いていると嬉しい。いや、そうじゃないと困る。

というのも初日から、ひとつ美術館駆け込みをキメようとしているからだ。
サン・ラザール駅から歩ける場所に位置するこの美術館は、モローの住居がそのまま美術館として利用されている。フランス象徴主義を代表する画家であるモローの膨大な作品群に触れられるのは当然ながら、彼の息遣いがそのまま残る居間や書斎、優美な螺旋階段に代表される邸宅としての美しさなど、見どころは尽きない。
内なる思想も含めてモローの作品世界を丸ごと堪能できる、象徴主義ファンにはたまらない場所だろう。

※もし飛行機の遅れ・空港の混雑・道路渋滞が発生した場合は、諦めて大人しく美味しい夕飯やスイーツを食べに出掛けます。


2日目:美術館との格闘

目を覚ましてまず向かうのは、シテ島に位置するサント・シャペル


ゴシック様式の頂点に値する聖堂で、薔薇色の光が聖堂内を包み込むようなステンドグラスが有名だ。朝から神聖な煌めきに触れ……というか、早めの時間帯じゃないと人が殺到しそうだし、こちらもその後の行程に響くので、9時半には次の目的地に着いておきたい。

開館時間が9時半だから、それに合わせて待機ってワケ。チケットは当然、事前購入を済ませておく。
オルセー美術館、19世紀美術を専門に収蔵している。真面目に回れば数日かかるが、こればかりはどうしようもない。印象主義、ポスト印象主義、象徴主義、世紀末芸術、アールヌーヴォー、同時代の工芸品。図ったようにわたしの見たいものしかない。
本当は「オルセーの中を具体的にどう回りたいか」まで書くべきかもしれないが、紙幅を埋め尽くしてしまうだろうし、こういうのは現場での出会いとインスピレーションを大事にしたいじゃん、ね?

撮影スポットとされている5階の大時計は、人が多過ぎたら諦める。食事はせざるを得ないので、せっかくなら館内の優雅なLE RESTAURANT Musee d’Orsayに足を運ぼう。
M氏とは間違いなく「じゃあ16時過ぎに入り口で集合!」と入場即解散になる。そうでもしないと回りきれないので仕方あるまい。なぜ16時過ぎか。この後にもう一館ハシゴしようとしているからだ。

(※色々調べていたら「オルセーは見るのにそこまで時間かかりません!」という記事を見つけたが、そんなものよりわたしはダチの「俺はルーヴルとオルセーを見るのに1週間かかったし、そのあと知恵熱を出したぜ」という証言を信用している)

次に向かうのはオルセーから歩いて10分ほどの場所に位置する、オランジュリー美術館


広々と展示されたモネ「睡蓮」の連作で知られる。オルセーとセットで来る人も多いと聞く。19世紀に染まった頭で見るスケールの大きなモネは、さぞかし壮観だろう。
オランジュリーについても「小規模なので1時間から1時間半で見終わる」という話を聞くが、まあこっちは本当にそうかも…と思っている。

ちょっと可愛い話をすると、オランジュリーから徒歩圏内にラデュレやアンジェリーナの店舗があるらしい。本店かどうかは分からないけど(滞在期間のどこかで)立ち寄れると嬉しい。あと、前期課程のクラスメイトに会って食事をするならこの夜がチャンスじゃないかと思われる。もしくは初日の夜。


3日目:いざヴェルサイユへ

当アカウントは宝塚およびベルばらのオタクではない。それでも貴重なパリ滞在の日程をヴェルサイユ宮殿に割こうと思うのは、ひとえに「ゴージャス要素を一度に浴びられるから」である。あとはまあ、世界遺産だし。小学生くらいの頃にツヴァイクの「マリー・アントワネット」をなぜか愛読してたし。


ヨーロッパに出掛けると豪華絢爛な宮殿を見なければ調子が狂ってしまうわけだが、その点ではヴェルサイユは間違いなく「ととのう」場所だろう。「鏡の間」に代表される豪奢を極めた装飾空間の数々、どこまでも人工的に整えられた庭、華やかな生活から逃れるような安らぎのプチ・トリアノン。一日中平気で楽しめる場所に違いない。

この日はさすがに、パリ郊外ということもあって電車移動に時間がかかるし、パリ市内でどこか行ってやろうなんて贅沢な企みはしない。翌日の予定に向けて、早寝する必要もあるらだ。


4日目:まさかのフランス縦断日

前述の「ダチ」はパリに住んでいるわけではない。ヤツの居住地はマルセイユからほど近い、南フランスのエクス=アン=プロヴァンスという都市だ。


水、リゾート、そして学問の町、エクス。セザンヌゆかりの場所としても有名である。パリとは質を異にする明るい陽光が射していることだろう。

なるべく日程を有効活用する場合、朝6時にGare de Lyon駅を出発するTGVに乗らねばならない。それだと10時前にはエクスへ着く。
特に何をしようという訳ではないが、ダチにエクスを案内されながら歩くだけでも存分に楽しめる、はず(クソデカ情報量の観光地ではなさそうだから、日帰り滞在でもきっと堪能できる)。
個人的には、街中を彩る噴水をたくさん見たいし、サン・ソヴール大聖堂やミラボー通りをなんとなくお散歩できるとかなり嬉しい。

欠かせないのは現地の伝統菓子、カリソン
「アーモンドと果物の砂糖漬けを土台にして、オレンジエッセンスをくわえたグラスロワイヤルを表面に塗った砂糖菓子」という説明書きだけでも、目も舌も喜ぶだろうと想像がつく。自分の味覚にハマったら買い込んで帰ろう。

日付を越さず、夜が怖くない時間に帰ろうと思ったら、17時台に出立し、20時台にパリに到着することになる。慌ただしいけど仕方ない。日本で会えることもそうそうないし、そこまでして会いに行きたいダチなのだ。


5日目:ついに夢の場所へ

移動疲れも取れたところで(本当か?)まず向かうのはガリエラ美術館


ファッション関係の資料が勢揃いしているミュージアムだ。基本的には企画展の開催中しか開館していないと聞いたが(常設展も始めるらしい、みたいな話はどうなったんだろう)ファッション関係の展示が大好きなわたしとM氏にとっては、夢のような空間だろう。

ここは双方クラシック音楽好きとしては、何となく立ち寄っておくべき聖地の気がしている。サン=サーンスやフォーレがオルガニストを務め、ショパンの葬儀が営まれた場所。ね、行きたくなるでしょ?

マドレーヌ寺院から徒歩10分弱、目指す先はレペット

日本でもバレエシューズの専門店として有名だが、振付師ローラン・プティの母親が創業者というバレエファンには大変アツいブランドだ。色鮮やかに並べられた靴の数々を眺めつつ、日本ではもう販売終了したと噂の香水を買って帰るのも悪くない。

そして、そしてだ。

レペットから歩いて数分。堂々と聳え立つその建物は、パリ・オペラ座、ガルニエ宮
オペラ座


 最初から劇場として建設されたので、本来は「宮殿」でも何でもないのだが、その建築の壮麗さからガルニエ「宮」と呼ばれたそうだ。黄金に彩られた非現実の社交空間、夢のように明るいシャガールの天井画、そしてパリ・オペラ座バレエ団。ずっと現実だと信じられないような浮ついた足取りで、劇場内をふらふらと彷徨ってしまうだろう。

個人的には「オペラ座で見るなら絶対これ!」という演目が決まってはいるのだが、次にいつ再演されるか読めないし、その点は柔軟に対応したい。


6日目:帰路、そして現実

ついにパリを離れる最終日。オペラ座の夢から覚め、清新な心地で歩きたいのがモンソー公園


ホテルからはそう遠くない場所にあり、広大な敷地の中にショパンの彫刻がひっそりと佇んでいるらしい。
最後の最後にこのショパン像に挨拶してから、余裕をもって空港に向かい、ロスバゲも遅延もなく無事に日本へ帰りつく――はず!


【自分でもわかる反省点】
・やはり初めての場所だとベタな行き先になりがち
・友達の意見を一切聞かずに友達を連れていこうとするのをやめろ
・体力が一週間無尽蔵だと信じて疑わない詰め込み方
・全体的に食事のことを忘れすぎ、カロリーメイト持参する気か?
・エッフェル塔と凱旋門をガン無視していたことに書き終わってから気付いた