空海を知る9 世界の空気に触れる | 絵本作家 ふじもとのりこの「絵本がもっと楽しめる!絵本製作裏話」

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絵本に関わり、早や40年。
ママと子が一緒に楽しめる絵本を4冊、工作本も出版!
絵本作家しか知らない、絵本の創り方、絵の技法、親子で作るキッズアート大公開
描いて、読んで、親子で絵本を10倍楽しもう♪

空海を知る9 世界の空気に触れる

 大学寮の勉強に物足りなかった空海が、入り浸っていたのが、大安寺でした。

 奈良時代、南都の寺院は、国家仏教の道場であり、大乗仏教の思想を学ぶ学問所でもあったのです。
 大安寺はそのなかでも異彩を放ち、中国や朝鮮やベトナム、インドから来た仏教僧が多く出入りする、国際仏教交流センターのようでした。

 大安寺は、古くから唐への留学僧を多く出し、鑑真を日本に招くために努力を重ねてきた、留学僧たちが集結している寺だったのです。

 真魚は、大安寺で聞く異国の言葉や文化、とくに仏教のインド的思考や行法に目を見張ります。
長く漢籍を学んできた空海にも新鮮な言語であり、哲学であったから。


大学寮での学びは、朝廷のエリートコースを目指すものであり、真魚が求めていたものとはかけ離れているとの実感が日に日にm増すばかりだった時に、大安寺に出会ったのは大きな衝撃だったでしょう。

特に、勤操(ごんぞう)という僧は、、隣の佐伯院から足しげく来ては、仏教や異国の言語に異常なほどに関心を示し、その吸収に並外れた天賦の才を発揮する大学生の真魚を好ましく思い、可愛がったのでした。
大安寺や勤操(ごんぞう)との出会いで、真魚は急速に仏教に傾いていきます。

勤操(ごんぞう)もしくは、大安寺にいた沙門にから、虚空蔵求聞持法を伝授されたのもこのころでした。

ついに、真魚は、大学寮から姿を消し、山野での修行生活に入ってしまいます。
一族の悲願である、高級官僚になるエリートコースをあっさり捨て、乞食同然の生き方に身を投じたのです。