※こちらは、
このブログを始める以前に
書かれた文章。転載です。
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2013年11月1日、
渋谷クアトロにて開催された
dip のツアーファイナルに
行って参りました。
今回のツアーは
先頃発売された2枚のアルバム、
「HOWL」「OWL」に因んだもの。
しかし、この日のライヴには
もう一側面があり、
そこには大きな意味が
込められていました。
それは「追悼」です。
今年亡くなった山口冨士夫氏。
そしてルー・リード。
当日のステージは、
御二方の「鎮魂」の場でも
あったのです。
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ライヴのオープニングは、
山口冨士夫氏の「Stone」
今回のツアー中、
この曲はずっと開演前の
SEとして流されていました。
その厳粛なるギターサウンドは、
一瞬にして場の空気を変える。
その静謐さの中、dip の三人は
登場し、ライヴはスタートしました。
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1曲目の「Hasty」から始まり、
立て続けに演奏される
新譜からのナンバー。
もつれることなく、
足元からしっかりと
組み上げられたサウンド。
新時代の dip はタフネスを
手に入れたか。
どの楽曲からも強靭な
肉体性が感じられる。
そんなことを反映してか、
アルバム「HOWL」の
いくつかの楽曲は、
既にライヴの新定番に
なりつつある。
特に「Fly by wire」などは
欠かせない曲になっていますね。
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ライヴ序盤で印象的だったのは
3曲目の「Mole Soul」
アルバムでは呪文の詠唱のような
内省的なイメージでしたが、
ここではネガとポジが反転した、
外向きの楽曲へと変貌していました。
この時のヤマジカズヒデ氏の
ギターは、殊更妖しく響き渡って
いましたね。
それはまるで、
解き放たれた魔術のようでした。
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妖艶なギターの
「Mole Soul」の後、
いくつかの曲を経て
ヤマジ氏のMCが入る。
一言、
「Walk on the Wild Side」と。
ここで Lou Reed が来るか!
と、色めき立って
しまいましたが、
直後に聴こえてきたのは
「13階段への荒野」のイントロ。
荒野とはすなわち"The Wild Side"
言っていることに間違いはない。
これはdipなりの、ルー・リードへの
返歌であり、それを名乗るに
相応しい名曲。
dip 随一のヘヴィーなギターを
聴かせる曲ですが、
その「重さ」はこの日も健在。
アウトロのリフは、
聴いている者の頭をガンガンと
叩きつけるかのように
鳴り響きました。
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今回のライヴにはゲストも登場。
新譜でも共演の佐藤研二氏が
チェロで参加されました。
四者での演奏、
まず最初は「Cyan」から。
のっけからブンブンと
鳴り響くチェロ!
いきなりドライヴ全開で、
躍動感に満ち溢れたプレイ。
ゲストだからといって臆せずに、
バンドさえ引っ張って行こう、
というような佐藤氏の勢いでした。
その熱はすぐに dip の3人にも
伝わり、演奏は高揚していく。
この「Cyan」という曲には
旧題がありました。
「上がっていくG」
そのかつての名と、
この瞬間のステージの様子が
私の中でピタリと重なりました。
この曲もバンドの新章、
新たな始まりを謳う曲なんだろうね。
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そして次に演奏された曲は
「Flow that Crown」
これが、この日の白眉。
忘れられない瞬間が訪れました。
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「Flow that Crown」は
アルバム「Owl」に収録された
20分を超える長尺の曲。
穏やかな表情を覗かせる
トラディショナルなナンバーで、
2枚の新譜の中でも
異色な存在です。
dip の中にこういった要素が
あったのは意外でした。
そして何故、
古式ゆかしいこの曲が、
今になって出てきたのか。
私にとっては謎でした。
この日も3+1ピースが
奏でる音は、フォーキーで、
そしてクリーン。
しかし、その白昼夢のような
明るさは、陰に潜む「不穏」を
感じさせました。
じっくりと時間を掛け、
練り上げられて行くその演奏。
それは段々と熱を帯びる。
ここから何かが起こる、
そんな予感がしました。
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延々と続くかに思えた
そのセッション。
しかし、突如その高まった熱は
解放される。
聞き慣れぬ「言葉」が
浮かび上がって来たのだ。
その一瞬、混乱と戸惑いが
湧き起こった。
だがヤマジ氏の歌に耳を澄ませば、
それはすぐに既知の「詩」であると
認識出来た。
「Heroin」
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲。
「Flow that crown」のブレイクに
この曲を挟みこんできたのだ。
そのシームレスな音の繋ぎは
圧巻でした。
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鮮やかなる展開。
その一瞬の間に様々な思いが巡り、
私の心は高揚した。
そして感銘とともに
ひとつの考えに至った。
「Flow that crown」に
潜んでいた鍵、それは
「The Velvet Underground」であり、
「Lou Reed」だったのではないか。
ヴェルヴェッツの最初期、
そしてルー・リードのルーツ。
それは、
カントリーやフォークなどの
トラディショナル・ミュージックで
あった。
その部分の継承が、
この曲には元来込められて
いたのではないだろうか。
光度の上がったステージを
観ながら、ふとそんな事を思った。
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暫しの輝きを放ったのち、
「Heroin」は収束して行く。
そして再び
「Flow that crown」へと。
しかし、
その後も Velvets の影は
離れて行かなかった。
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dip の3人、
ヤマジカズヒデのギター、
ナガタヤスシのベース、
ナカニシノリユキのドラムス。
そしてゲストである
佐藤研二のチェロ。
そのアンサンブルから
繰り出される音は、
「Heroin」以降であっても
The Velvet Underground の
生き写しのようであった。
チェロの音は、まるで
ヴェルヴェッツのヴィオラか。
そしてナカニシ氏の
ドラムスからも、
モーリン・タッカーの影が
見え隠れしました。
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「Flow that crown」の次は、
なんとこの日が初披露の
新曲でした。
当日、ライヴ会場で発売された
CD-Rに収録されていましたが、
タイトルは「DUMB」との事。
性急かつソリッドなビートの
パンク・ナンバーです。
そして「DUMB」以降は
佐藤氏が抜け、
3人編成へ戻りました。
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これ以降、
アンコール前までの曲で
一番印象に残ったのは、
「lilac accordion」でしょうか。
こちらはバンド初期のナンバー。
録音物としては、
初期インディーズ版と
メジャーレーベル版の
2ヴァージョンが
存在するのですが、
この日はどちらとも
少し違っていた。
いうなら混淆か。
そして、やっぱりVU的に
聴こえたのです。
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この日は「DUMB」以外に
もう1曲、新曲が披露されました。
タイトルは「RAMONE」。
ヤマジカズヒデ氏によると、
"ヴァセリンズ気分で"作った
曲との事。
なるほどね、と膝を打つ。
まさしく、
そんな感じのナンバーでした。
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そして「RAMONE」の後は
アンコール前のラスト、
ライヴの新定番、
「Fly by wire」で締め。
ヤマジカズヒデが吠える。
そしてギターは空間を切り刻む。
押し寄せるナガタ氏のベース。
たたみ込む
ナカニシ氏のドラムス。
夥しい熱量で、
一気に場を高揚させました。
その後、ステージは一旦幕を引く。
そして会場の熱気冷めやらぬ中、
再び dip 登場。
アンコールが始まった。
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一体、
どの曲から始まるのだろうか?
ステージに注視する中、
ヤマジカズヒデのギターは
イントロを奏でる。
聴こえて来るは
「Here she comes now」か!
再びのヴェルヴェッツ・ナンバーに
色めき立つ。
だが、数小節のギターソロの後に
始まった本編は、
同じくヴェルヴェッツの
「I'm waiting for the man」
あれ、俺間違っちゃった?
恥ずかしや~。
でもやっぱりあのイントロは
「Here she comes now」だった
気がするんだけどな。
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「I'm waiting for the man」
この曲は dip、及び前身バンドの
dip the flag 時代からのお馴染み。
やっぱりこの曲は演るよな、と
納得のナンバー。
曲自身と、
それにまつわるエピソードが
ない交ぜになる。
ギターのリフから
ルー・リードが透けて見えた。
ここでは dip も VU も垣根なく、
同等に存在していましたね。
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次に繰り出した曲は
オリジナルの
「Superlovers in the sun」
イントロが
フィンガー5っぽい曲だね、
なんて俺も例えが古いな。
この曲の演奏後、
再び dip はステージから掃け、
2回目のアンコールへと
向かいました。
三度目の登壇、現れる3人。
そしてヤマジカズヒデは、
それまで使用していた
ジャズマスターではなく、
テレキャスターへと手を伸ばす。
となると、
演る曲は決まっていますね。
「Sludge」です。
この曲の直前だったかな。
MCでヤマジ氏が少し語っていた。
Sludge = 泥沼
それを自身の過去に例えつつ、
そこから抜け出した現況を。
本当にありがたいことですよ。
彼の健在が、
こうして聴く側にとっての幸福に
繋がっているのですからね。
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「Sludge」のギターのイントロが始まる。
その斬り込むようなリフと、
テレキャスターの硬質な音に
齟齬はない。
まさにこの組み合わせならでは。
そして、
そこにベースとドラムスも重なる。
それは唯一無二の音。
改めていう必要は
ないかもしれないが、
そこにあるのは
技術の巧緻ではない。
「One and Only」ということ。
その精神はヴェルヴェッツに同じ。
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なんて偉そうなこと言いましたが、
本当はこの時、
そんなしち面倒臭いことを
本気で考えていた訳ではなく、
私はパーティー気分で
盛り上がっていただけw
そして、ある事に備えていました。
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このツアー中、
「Sludge」の曲間には
あるフレーズが一瞬だけ
組み込まれる仕様に
なっていたのです。
それに対しての備え。
ブレイクを今か、今かと待ち、
ついに来たその時。
山口冨士夫=Teardrops の
「いきなりサンシャイン」!
この曲のサビを一瞬だけ投入!
やっぱりこの日もありました!
私は大声を上げて
反応してしまいましたよ。
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狂騒と歓喜に包まれた一時。
とても楽しかったな。
しかし至福の時は
終わりに向かう。
これにて終曲。
ステージは幕を閉じました。
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様々な思いが渦巻くライヴでした。
しかし、この日一番感じた事は、
dip と The Velvet Underground の
近似性。
ここまで深く
VUの影響があったとは。
それを再認識した次第。
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VU、そして Lou Reed
彼らが抱えていた「鬼火」は
消えていない。
まだ「ここ」にある、ってことですよ。
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2013年11月01日
[dip]
HOWL/OWL TOUR-FINAL ONEMAN
@CLUB QUATTRO
Set list
se. Stone (山口冨士夫)
01. Hasty
02. Telvet
03. Mole Soul
04. Saturnine
05. Stars, stars, stars
06. Spider in my hair
07. 13階段への荒野
08. Off the sun
09. Cyan
10. Flow That Crown
11. Dumb
12. Siamese Fins
13. lilac accordion
14. faster, faster
15. Ramone
16. Fly by wire
en1. I'm waiting for the man (VU)
en2. Superlovers in the sun
en3. Sludge