先日、茗荷谷付近で見かけた都営バスの尻に描かれていた広告なんだけれど…何を訴求しているかわからないシュールな広告だったよ。
※誹謗中傷をする意図はないので、間違いませんように。
キャッチコピー…
- 近江牛と言えば、本場近江八幡市:申し訳ない。初めて聞く名前だわ。
- 日本三大和牛:近江牛は有名だとは思う。けど、少なくとも私は肉か脂かわからないものは苦手。これの旨みは肉じゃなくて脂でしょ。従って、私の中の定義は肉じゃなくて脂なんだ。なので三大和牛とか言われてもな…
- 近江牛生産量日本一:滋賀県でしか生産できないのに「日本一」???
はるか昔の事だけれど、ある集まりの中で(まぁオフ会のようなものと思いねぇ)、それぞれどこの出身かをきく時間があったんだ。
「東京です」「大阪です」「名古屋です」「福岡です」「新潟です」「岩手です」…まぁ大まかだけれど納得するよね。
その中で「キノサキです」という人がいたんだ。
ほぼ全員が「え?」と振り返った。
それを見た本人が「え?なんで不思議がるん?」という顔をした。
キノサキは兵庫県の城崎で、温泉だとか海水浴だとかカニだとかスキーだとか、四季を通じて楽しめる場所で、リゾート地として関西では有名らしい。なので、関西の人には「ふんふん」と納得だったかもしれないけれど、他の地域の人には「はにはに?」だったんだ(唐突に「留辺蘂出身です」「音威子府出身です」と言われたって、まず読み方がわからないし、読めたとしてもそれがどこら辺かなんて、多分北海道民でさえわからない人続出じゃないか。北海道のような広いところでなくても、住んでいる都道府県内でさえ離れた場所にある市町村名を知らないなんてよくあることだ)。その反応に慌てて「豊岡です」と言い直したんだけれど結果は同じ。関西の人が「兵庫の日本海側だよ」と補足してくれたら、今度は「え!兵庫って日本海に面しているんですか!」と…(余談その1…海に面していそうで面していない滋賀県、日本海とは無縁そうで面している京都府と兵庫県…私は日本全国出歩いているので知っていたけれど、そのあたり間違う人多いみたいね。余談その2…この時「名古屋です」と言っていた人が実は岐阜の人で「岐阜と言っても『はにはに?」とされそうなのでつい…」と詐称の言い訳をしていた。まぁ良くある事らしい)。
このように、その周辺では有名、当たり前と思っていても、ちょっと離れたら無名なんてよくあることだ。
多分、関西圏以外の人の8〜9割くらいの人は近江という名称は知っていても、近江八幡市は知らんちゃう?そんなことない?
また、「生産量日本一」という表現は正しくないと思うんだよ。
競(せ)りは買い手が1人では成立しないのだそうだ(1人では競る相手がいないから当然と言えば当然だわね)。
それを踏まえて、他の都道府県でも生産しているのであれば、例え相手が1ヶ所であっても「競った結果、うちが日本一です」というのは間違いではないと思うんだ。でも、条件から滋賀県内で生産したものしか近江牛を名乗れない=他都道府県では生産できないなら、それでは競りは成立しない。それは「日本一」ではなく、競る相手が存在する「滋賀県一」が正しい表現ではなかろうか。
で、この広告の主旨はなんなんだろう?
コピーを自分なりに読み解くと「(日本三大和牛の1つである近江牛の生産量日本一の)近江八幡市を知ってください」という広告に見えるんだけれど、それで間違えていない?
少なくとも「近江牛をもっと買ってくれ・知ってくれ」という話ではないよね。
もし「近江牛を」という話であれば、何も「うちが日本一の生産量」という表現をする必要はなかろう。同様に「近江八幡市」をアピールする意味もない。なので、私の理解が正解だと思うんだ。
で、近江八幡市を知った後はどうすれば良いんですか?と思ってしまう
近江八幡市を知って「近江牛生産量日本一なら、行ってみようか」となるかな?
そういう誘導を期待した広告?
それとも「まずはとにかく名前を知ってください」?
まぁ、少なくとも1人(私)はこの広告に引っかかってブログのネタにした。
「近江八幡市を知ってください」戦略は成功しているかもしれない。
多分、近江八幡市という名前は、いつまで覚えているかは別としても、今この瞬間は頭に入った。
しばらくは「ああ、あの都バスの広告のね」と思い出すかもしれない。
でも、それもいつまで続くか。また、続いたとしても「じゃあ近江八幡市に行ってみようか?」に繋がらないよ。
これが「(その表現が間違っているとしても)日本一うまいと選ばれた近江牛は近江八幡市で生産されました。その肉は近江八幡市でしか食べられません」とかそんなキャッチコピーなら「では行ってみるか」となる可能性もあると思う。でも、県内あちこちで作っている(そして肉自体日本全国に流通している)近江牛の中で、生産量はうちが一番だからね」と自慢されてもねぇ…
「う…うん」「お、おう」「へ、へぇ」とどもりながら当たり障りのない返事をする以外どうしたら良いの?
気の利いた返事を求めるなら「フットンダ王決定戦」のお題にしてもらうなど努力が必要だろう。
考えさせられる広告としては面白いと思ったけれど、モヤモヤの残る広告でもあった。
自分個人としては「近江牛食べたい」という気持ちより「その元となる但馬牛を食べに兵庫県に行きたい」という気持ちが湧いたよ。
果たして、正解はなんなのか気になるね。