ザルツブルグ音楽祭 オペラ編 | George's Blog

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旅行に行った時の思い出を書いていこうと思っています。更新はあまりできませんが・・・

オペラの話

 

 ザルツブルグに寄ったのは、翌日の出発が早かったことと、1つくらいはコンサートを聴こうという思いからだった。オペラは避けたかった。というのもここ数年の経験から言って、高い金を出す価値を見出せなかったからだ。最後に観たのは8年くらい前の「フィガロの結婚」。アンナ・ネトレプコがまだ痩身で、声も細く綺麗だったころ。この時もヒドイ読み替え演出で怒りを覚えたのだ。以来コンサートには行くけど、オペラは行かないと決めていた。

 じゃあなんで?今年は日程的にここしかなく、演目としては好きな「ファルスタッフ」、チケットはオペラにしては安価な座席が残っていたという理由。空席があった時点で、人気がないと思えばよかったのだが、コロナの影響で昨年も売り切れの演目が少なかったので今年もそうなのだろうと良い解釈をしてしまったのが過ちだった。

 

 今宵の開演は19時、終演は22時半にはなる。昨年の反省で22時を過ぎる場合はレストランは閉店、夕飯を食べれない。ヒモジイ最終夜を過ごす。ということでホテル近くにあった中華料理に行って、テイクアウトで夕飯を買ってきた。あとスーパーでビールも(汗)これで万全。そして19時開演に間に合わせてホテルを出て祝祭大劇場に向かった。

 

 昨年もそうだったが、入り口での空港よりも厳しい荷物検査なんかされて気分を害す。おまけにその荷物を持っていると、クロークに預けろと居丈高に言ってくる無駄に背が高いスタッフ。オペラが始まる前からこの上なく気分が悪くなる。

 

 今回のチケットはカテゴリーでいうと上から3番目くらい。それでも215€。円が安いから確か33,000円くらいだったかと。座席は一階中央の後ろの方、日本だったら最高料金席だけど。ここのホールは間口がやたらデカいので、オペラは二階か後ろの方が全体を見渡すのに良い。しかし、僕の前に座高の高いオジサンが座ってしまい。視界が大分悪くなった。


ザルツブルグ祝祭大劇場 開演前自分の座席から


  2ベルが鳴り終わったのに、後からダラダラと来るイタリア人オバサンご一行のせいで何度も席を立たなければならなかった。イタリア人はマナーが悪く、当然のように前を通過していく。頭にくる。

 

 さて指揮者がオケピットに入り、オペラが始まると思いきや、一向に音楽が鳴らない。するとスーツを着たデブのオッサンが舞台下手にあるシアターのような座席に座る。そこにわけわからん出演者が出てきて着席。すると映像が映し出され、録音されたフェントンの声が聞こえる。が、本編は始まらない。しばらくするとそのオッサンが舞台の中央に出てきて、それに続いてカメラを持った女性?がその姿を映すような格好をすると、ようやく冒頭の音楽が始まった。あとは読み替え甚だしい、何を意図しているのかわからないシーンが続いて、進行していった。

 ツッコミたいところは多いけれど2点に絞って書く。一つは第2幕第2場の最後で、ファルスタッフが洗濯篭ごとどぶに放り投げられるシーン。1幕から一切変わらない舞台装置の中で、上手にあった意味不明なスイミングプール。おそらくこのシーンで使われるのだろうとは思ったけど。ホントだったらファルスタッフがそこに投げ入れられるところだけど、1幕の最初から舞台に出続けていたデブのオッサンが誰かに押されてその中に落ちて行った。それを眺めるファルスタッフ!まあファルスタッフを客観的に見ている存在にしたかったのかもしれない。でも観客は勿論笑うことなく終わってもパラパラの拍手。当たり前。


カーテンコール 上手に見えるのがプール 

練習ではありません。本番の舞台。衣装もです。


 もう一点は最後のアンサンブルでジェネラルパウゼのあと、ファルスタッフが歌う「tutti gabbati」ではあらぬことか、目障りなファルスタッフの化身?が歌ったのだ。歌手ではないから素人の声。これにはあきれ果てて何も言えなかった。『すべて馬鹿者』って!!

 舞台は吹き抜けにしてしまい、ただでさえ響かないのに、反響がないので歌手の声が抜けてしまい、オケがフルで演奏すると声がかき消されてしまったり、ホントに気の毒だった。ウィーンフィルは素晴らしかったけれど、指揮者のテンポが早すぎるところもあって、アンサンブルでズレていた。

 幕が下りたものの、パラパラ拍手。最初に演出家陣が出てきたものの、パラパラ。というか終わった途端に観客が一斉に帰りだしたのには笑えた。1幕の途中でも6人くらいの客が急に席を立って退場したこともあった。

 読み替え演出が絶対に悪いとは思わない。でも昨今のは演出家のマスターベーションそのもので、音楽を無視してオペラの本質が何なのかがわからないただの芝居のようだ。オペラの醍醐味はない。

 こんな思いをするためにわざわざザルツに寄ったのではないのに。ブツブツ言いながら石畳を歩きながらホテルに戻り、ビールを飲みながら中華弁当を食べて就寝したのだった。 


間口が広い吹き抜けにしている舞台