弥生がやっと結婚するって知ったのは先週のことだった。
別に元カノでも好きだったわけでもなく、よくツルんでた仲間の一人。
ただ・・・なにしろ「ファミコン」がうまかった。
「キン肉マン」でもブロッケンJr.を使わなくても、下手くそな男どもをバタバタと倒していった。
そして付いたあだ名が「あらし」
華麗なコントローラー捌きは、まさに「炎のコマ!」
マニアックネタでゴメンネ。
・・・違う、どんなことはどうでもいい・・・
結婚するって話だ。
お祝いでも送ろうとしたけど、連絡先がわからない。
思いついたのが、弥生と仲が良かったヨッシー。
彼女なら知ってるだろう・・・けど・・・
大丈夫か?
このヨッシー、何せ人の話を聞かない。
どんだけ聞かないかってーと、学生の頃花火大会に誘った時のこと。
「ヨッシー。今度の土曜日、シンゴ達と江の島に花火見に行くんだけど行かねぇ?」
「うん!行く行く! 誰と?」
「え?シンゴとタイチと弥生」
「うん!行く行く! いつ?」
「え?25日の土曜日・・・」
「うん!行く行く! どこ?」
「え?江の島・・・って、何も聞いてなかったのかよ!つーか、話のどの部分で『行く』って決めたんだよ!」
ってな感じで、マジメに、
「朝起きたらさぁ・・・昼だった・・・」
とか
「それって、『世界三大七不思議』だよねぇ」
なんてことを言ってのける。
そりゃあ、昼起きたんだよっ!
「三」か「七」かどっちかにしろ! そんなデカイ不思議は21個も無ぇよ!
突っ込みどころマンサイ。
・・・まぁ、聞いてみるか、ヨッシーに・・・
「ヨッシー?弥生結婚したんだって?」
「そう、だんなさんの関係で三重に住んでるの。12月に行ってきたよ」
「三重?三重って、あんまり行ったことないなぁ」
「12月に行ってきた。大きな家だったよ」
「三重って、何がある?」
「う~ん・・・なんだろ?」
「『志摩スペイン村』って三重だっけ?」
「う~ん・・・わかんない」
「『伊勢神宮』は?」
「う~ん・・・どうだっけ?」
「まぁ、とりあえず住所わかる?」
「わかるよ。ちょっと待って」
「俺も弥生に会うついでに三重に行ってこようかな、あんまり行ったことないし」
「いいとこだったよ。あ、住所言うね」
「おう」
「えっと・・・奈良県・・・」
「は???」
「奈良県生駒市・・・」
「いや・・・『三重』は?」
「あ、『奈良』だった」
・・・おいおいおいおい・・・
そりゃあスペイン村も伊勢神宮もわからねぇわ。三重なんて行ってないんだから。奈良だもん、行ったの。
こうしてなんとか住所と携帯番号を教えてもらい、電話を切った。
せっかく携帯教えてもらったから、電話してみるか。
と、弥生に電話したけど留守電。
せっかくだから伝言入れとこ、誰だかわからないだろうし。
「お~い、弥生!結婚したんだって?おめでとー!長かったなぁ。おい!・・・」
と、テンション高く学生チックなノリで伝言を入れておくと、少ししてから電話が鳴った。
お、弥生、伝言聞いてかけ直してきたな。
と思ったらヨッシー。
「おう、どうした?」
「あ、ごめ~ん。電話番号間違えてた」
「いい加減にしろい!!!」
人間ってなぁ、何年たっても変われないもんなのか?
「成長」ってものはしないのか?
どうなんだ!!
安心しろ、ヨッシー。
俺ん中では、あんたが22個目の「不思議」だよ。