55に涙したこの1か月の苦悩と後悔 | 「迷ったらGO!」

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思い立ったらやっちゃえ!的に行き当たりばったりで行動してしまう、いくつになっても落ち着けないベイスターズファンの親父と、カープ命の母親ジュン、そしてなぜかドラゴンズ狂の息子カイが繰り広げる三つ巴の熱き戦いをお送りします。

人生で初めて本当の「後悔」というものをした。


「反省」はしなくても「後悔」は頻繁にしていた。


一時停止無視で捕まって、


「そうだよな、危ないから今度からちゃんと止まろう」


っていうのが「反省」で、


「っちっくしょー!『止まった』って言い張りゃあよかった!」


っていうのが「後悔」。


だけど、今回はそんな罰金払えば済むもんじゃない。



1か月前、宮崎に転勤を言い渡された。


結果的に言うと、家族で行くことにした。


ただ本当に悩んだ。


カイの学校、高校受験、反抗期、ジュンの仕事、などなど。


基本的に転身赴任は認められない。


でもあと一年カイには同じ中学に行かせてやりたい。


そうなると、ジュンと二人で大丈夫か?


何かあっても宮崎から広島はすぐには来れない。


ただ中三で転校なんてあんまりだろ。


会社は単身認めてくれるか?


ってことは、宮崎の高校に行くの?


根本的に今の会社でいいのか?これを機に辞めるか?


一つ結論を出すと、そのデメリットと他のメリットが浮かび上がる。


・・・・・たった数日で人生を大きく変える決断をしなきゃならないなんて。


転勤し慣れてる人からしたら大げさかもしれないけど、


すっかり広島に根っこ張って14年。


その「根っこ」は思ったより広く、深く、広島という土地と、そして俺たち家族の心の中に張られていた。


それを知ったのは、宮崎に来てからだった。





次の週に家を決めにハイエースぶっ飛ばして1泊で宮崎まで来た。


ただ・・・家がない・・・。


引っ越しシーズンで、ネットでチェックしたのは全部決着済み。


焦る・・・。


不動産屋の出してきたマンションに、半ばヤケクソ気味で決めた。


「じゃあ、部屋見せてもらえますか?」


「あー、ここ、明日退去ですね。まだきれいになっていませんが、あさって・・・」


「今日広島帰るんです!」

こうして実際に部屋を見ずに、紙に書かれた間取りだけで決定したのだった・・・。




まぁ、それはいいとして・・・不動産屋を出たところからカイの様子がおかしくなってきた。


いつもなら助手席に乗るのに、後ろの席で横になり、


何を聞いても投げやり、


「どうしたんだよ?」


「どうでもいいよ・・・」


転校する実感がわいてきやがったな・・・。


今までは引っ越しって言っても初めての体験だから想像ができなかったようだが、実際にこれから住むところに来て、ようやく広島を離れることを理解した瞬間。


それからが大変。


引き継ぎ、引っ越し準備、転校手続き、ガス水道電気郵便局などなどなどなどなど・・・


宮崎の学校の始業式に間にあわせるために、一週間で14年間住んでた痕跡をきれいになくす。


家から出した荷物の多さ、


そして何もなくなって実感する家の広さ・・・。


引っ越してきた初日、まだ歩くこともできないカイと3人でほおばった「むさし」のにぎりめし。


そんなことを思い出しながら、ベランダからの景色を写真に撮り、家を出た。


もうここに戻ってくることはないだろう。


駐車場に行くと、会社の仲間やカイの友達でごった返していた。


車に乗り込むと、一斉にカイの友達が走ってきてプレゼントと寄せ書きのTシャツを渡してくれた。


カイ、こんなに愛されてたんだ・・・。


当分、車の中は誰も話さなかった。




宮崎に着いた後もドタバタは続いた。


もう、WBCも、プロ野球の開幕も、熱湯甲子園も、サッカーWC予選も、どこか遠くの星に隕石がぶつかったくらい気にしてられなかった。


そんな中、カイの学校が始まった。


春休み中、近くの池に毎日釣りしに行ってた。


無理やり。


そう・・・さみしさを紛らわすために。


一生懸命強がってるのはわかってる。


学校が始まると、強がりにも限界が来た。


木曜日、朝、頭が痛くなる。


保育園のころから中学2年まで、インフルエンザでさえ学校に行こうとしていたカイ。


こんなに行くのが辛そうな姿を見るのは、初めてだ。


一日だけすぐに帰ってきただけで、あとは何とか言ってはいるようだ。


でも、そういえば笑顔を見ていない・・・。


家を探しに来た時から、笑っている姿を見ていない。


金曜日の夜に二人で話した。


「正直に何でも話してくれ」


でもなかなか言葉にしない。


新しい学校の友達は優しいし、みんな話しかけてくれるし、いじめもない。


質問に少しずつ答えてくれた。


「元気がない理由は何?」


「・・・広島のことが、頭から離れない・・・」


堰を切ったように話し出した。


「職業体験も行きたかった。駅伝もみんなで出たかった。1年の時には授業聞いてなくて、2年でまともになり、3年はしっかり勉強しようとも思った。体育祭、文化祭も、卒業もみんなでしたかった」


確かにあまりに濃い中学・・・だけじゃなく、広島での14年間だった。


あと一年、広島にいさせてあげることはできなかっただろうか?


会社に頼み込んででも、そうするべきだったんじゃないか?


初めて・・・本当の「後悔」をした・・・。





土曜日の夕方、家から1時間くらいの所にある「野尻湖」へ行った。


バス釣りでもすれば気がまぎれるんじゃないかと思って。


魚の気配がない中、必死でルアーを投げているがもう日が暮れる。


あきらめて、「俺、車に戻るわ」


カイ「俺、もうちょっとやる」


がけを登り、車のドアを開けようとすると声が聞こえた。


「きたー!!!!」


ダッシュで再びがけを降りる。


「デカい!!」


「待ってろ!今いく!」


着いた時にはもう水辺から上がってきた。


その手には巨大なバス。


「す、スゲェ!!デケェ!!」


吠えるカイ。


興奮しながら計ってみると、プリっぷりの55センチ。


「やった!自己新!50アップ!」


その姿を見て、泣きそうになった。


3週間ぶりに見た、カイの笑顔だった・・・。


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