思い出がいっぱい・・・なんて年にはまだ早い中学二年のカイ。
携帯がほしいと言い出したのは去年の夏だった。
よし、どんだけほしいのか本気を見せろ!
とテストで5教科全て平均から15点オーバーなら買ってやろうと約束したものの、全然やる気なし。
15点取らせるためじゃない。本気度を見せてみろ!って話だ。
「陸上部で俺だけ持ってない」ってう理由みたいだけど、
彼女でもできたんじゃねぇのか?
前回のテストくらいから気合いが入り、今回もかなり勉強してた。
よし、どうやら本気でほしいようだ。
しょうがない、買ってやるか。
ただし、便利な分大人の世界と平気でつながるから注意しろよ。
テストが終わった週末の土曜日、カイは部活から自転車でエディオンに集合。
そして苦節半年、シンボルカラーの赤いスマホ、ゲット!
めちゃめちゃテンション上がってる。
喜び勇んで、俺らは車で、カイはチャリでとりあえず家に向かう。
が、車に乗ってちょっとするとカイからさっそく電話が入った。
「どうした?」
「自転車が・・・ない・・・」
どうやら駐輪場がいっぱいで、その辺にとめていたら不法駐輪で持って行かれた・・・
「あれほど駐輪場入れんさい言うたじゃろうが!」
カイ、一気にテンションだだ下がり・・・。
明日にならないと自転車取りには行けない。
すぐに着替えて、今日は某釣り具店のメバル釣り大会に出発。
店でエントリーし、大島へ。
まだ明るいので余裕かましてると、いきなりジュンがカサゴ18センチをゲット!
マジかよ!やっぱりか!
カイと、ジュンてこういう時に釣るんだよな・・・と話してたのが現実となった。
暗くなり、さて、本腰入れてやるか、とカイが防波堤の先端に行ったと思ったら、少しして戻ってきた。
「ティップが・・・落ちちゃった・・・」
「はぁ?」
竿を立てかけたら、風で倒れた時にティップが抜けて海に落ちたらしい。
本日二度目のテンションだだ下がり・・・。
もう、見たことないくらい沈んでる・・・。
見るに見かねて「俺の使えよ」と竿を貸して続けるも、結局1匹も釣れず終了。
そして日曜日。
カイは友達とバス釣りに行く予定だったが、午前中に電車と歩きでチャリを取りに行った。
俺らは別の用事で外出。
チャリを取って家に帰り、道具を持って友達と合流する・・・はずだった。
ジュンに電話があり、
「家、帰らんよねぇ」
「帰らんよ。どうしたん?」
「家のカギ忘れた・・・」
三度目のテンションだだ下がり。
結局、竿もルアーも持たないまま合流。
俺らも用事を済ませて家に帰り遅めの昼食をとっていると、カイの友達から電話が入った。
「どうした?」
「あの・・・カイの頭に・・・ルアーが刺さってしまって・・・抜けません」
「なにぃ!?」
友達が引っかかったルアーを外そうと竿を振ったら、ルアーが飛んできてとなりにいたカイの頭に刺さったようだ。
むかえに行き、頭にデカイミノーをぶら下げたまま病院へ直行。
あっさりルアーは取れたが、頭に大きなガーゼをヘアピンで付けたまま。
受付の人に笑われ、
看護婦さんに「魚じゃなくて頭釣っちゃった」と言われ、
ジュンの親父さんにガーゼを「頭にチョウチョがいるぞ」とからかわれ、
四度目のテンションだだ下がり・・・。
かわいそうになり、焼き肉食べ行くももう元気がない。
そして月曜日、テストが帰ってくるも、15点オーバーどころか・・・平均点下回ってるのもある。
「あんなにやったのに・・・」
・・・撃沈・・・。
スマホ買ってからというもの・・・
自転車持ってかれるは、ティップは落とすは、家のカギ忘れるは、ルアーが頭に刺さるは、テストは最悪・・・。
なんだ?どうした?
スマホが言ってるよ
「小僧が・・・スマホ持とうなんて生意気なんだよ!」
ルアーが刺さったのが頭だから良かったけど、目だったら笑えない。
カイ達も相当反省したようでした・・・。