相続って何-②遺言 | サラリーマン弁護士がたまに書くブログ

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2019年7月にうつ病を発症したことをきっかけにブログを始めたサラリーマン弁護士が、書きたいことをたまに書いています。

今日は,昨日の続きで(昨日のブログはこちら),相続の話をします。

 

昨日は,

 

人は必ず財産を残して死ぬということ,亡くなった時に残された財産を「遺産」と呼ぶこと,そして,遺産は持ち主が亡くなった瞬間に,法定相続人全員の「遺産共有状態」となり,そのため,法定相続人が遺産に手を付けることはできないけれども,遺産共有状態を解消する「遺産分割」が済めば,遺産が相続人に引き継がれ,相続人も遺産に手を付けることができるようになる

 

そんなことをお話しました。

 

しかし,これは遺言がない場合です。

 

そもそも,自分の財産は,どう使おうが自分の勝手です。

 

だから,自分が死んだ後に,自分の財産を誰にどれくらい分配するか,自分で決めていいわけです。

 

だって,自分の財産だから。

 

遺言は,このような役割を有するのです。

つまり,自分の財産を,自分が死んだ後に誰にどのように分配するか,死ぬ前にあらかじめ決めておく,というのが遺言なのです。

 

遺言が残されていた場合,その遺言で,配分の方法が書かれた財産については,昨日お話した「遺産共有状態」が生じません。

 

「遺産共有状態」が生じないというのは,亡くなった瞬間に,遺言に書かれた人物に,その財産が承継されるということです。

 

例えば,渡辺謙が,「長女杏に全ての財産を相続させる」という遺言を残して亡くなった場合,渡辺謙が亡くなった瞬間に,渡辺謙の財産全てが杏に承継されて杏の持ち物となり,同じく渡辺謙の子どもである渡辺大と杏との間で「遺産共有状態」が生じることはありません。

 

まあ,自分の財産をどう配分するか,自分で決めていいのですから,このような結論に違和感を持つ方は少ないでしょう。

 

ただ,ここで「遺留分」という制度が登場します。

 

先ほどの例では,渡辺謙が「財産全てを長女杏に相続させる」という遺言を残して亡くなっているので,杏が渡辺謙の財産全てを承継することになる,ということでした。

 

自分の財産をどのように分配するかは,持ち主の渡辺謙自身が決めていいからです。

 

最初に言っておくと,「遺留分」というのは,この「杏が全ての財産を承継する」という結論を変えるものではありません。

 

「全ての財産を長女杏に相続させる」という遺言が残されていれば,全ての財産を杏が取得します。

 

では,「遺留分」とは何かというと,簡単に言えば,「法定相続分の半分の金額」を,遺産をもらいすぎた人に請求できる,という制度です。

 

うーん,難しいですよね(笑)

 

まず「法定相続分の半分の金額」について説明します。

 

先ほどの渡辺謙の例で,渡辺謙の遺産が10億円(不動産5億円,預金3億円,株式2億円)で,子どもは杏と渡辺大の2人とします。

 

この場合,渡辺大の「法定相続分の半分の額」とは,渡辺大の法定相続分2分の1(相続人は子ども2人なので,子どもの1人である渡辺大の法定相続分は2分の1となります)の半分,つまり「4分の1」×10億円=2億5000万円,ということになります。

 

この「2億5000万円」を,「遺産をもらいすぎた人」,つまり「杏」に請求できる,というのが遺留分です。

 

以上をまとめると,

 

①「全ての財産を杏に相続させる」という遺言によって,10億円分の財産全てが,杏の物となる。

②しかし,渡辺大も,杏に対して,2億5000万円のお金を請求することができる。

 

これが,遺留分制度です。

 

ただ,遺留分の請求には,時効があります。

気をつけてください。

自分の取り分が遺留分に足りていないことを知った時点から1年間です。

 

渡辺謙の例のように,自分が遺言で何ももらえない場合は,遺言を読んだ日から1年経過すると,遺留分を請求することはできなくなります。

 

また,亡くなってから10年経過すると,仮に遺言の存在すら知らなくても,遺留分を請求できなくなります。

 

 

うーん,遺留分というのは,不思議な制度にも見えますよね。

 

だって,自分の財産が死んだ後にどうなるかは,自分で全部決めていいはずなのに(形式的には,遺言どおりに財産を承継させることを認めていますが),遺産を承継した人に対して遺留分の請求ができ,その請求に対しては,遺産からお金を出すことになるわけですから,実質的には,「自分の財産の分配を自由に決められる」という亡くなった人の自由に制限を加えているからです。

 

どうして,こういう制限を設ける必要があるんでしょうねぇ。

 

「法定相続人(子や妻)の期待を保護する」ということが言われていますが,うーん,ちょっと説明として無理がありますよね。

 

「期待を保護」って,亡くなる前には全然知らなかったり,全く疎遠になっていたりするパターンもあるわけですよね。

そんな場合に「期待」ってあるんですかね。棚からぼたもちの場合もあるはずです。

 

そうすると,「期待」というよりは,「子や妻が,一切もらえないというのはおかしいよね」という価値観を理由とするしかないでしょう。

 

何ももらえないというのはおかしい。

だって,疎遠だったとしても,妻や子どもなんだから。

 

そして,遺留分というのは,必ずもらわなきゃいけないものでもないんです。

請求しなければ,時効で消滅するからです。

 

もらいたくないなら,請求しなくてもいいのです。

 

逆から言えば,たくさんもらった人も,遺留分がある人から請求されなければ,自分がもらった遺産を脅かされることもないわけです。

 

遺留分というのは,本当によく問題となります。

 

遺産の総額に争いがあったり(遺産の総額が決まらないと,請求できる遺留分の額も決まりません。),時効期間が短いので時効の成否が争いとなったり。

 

なかなか難しいので,躊躇せず弁護士に相談してください。

 

特に,時効期間が短いですからね!

 

それではまた明日。

 

 

 

 

 

では,自分の財産を誰に

 

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