前回の記事の最後に紹介したのですが、半世紀ぶりに日の目を見ることになった、1958年にカラヤンがミラノ・スカラ座で指揮をした『ヴァルキューレ』のCDについて、もう少し書きたいと思います。
カラヤンの『ヴァルキューレ』の全曲録音としては、1966年8月~12月のベルリンにおけるドイツ・グラモフォンのスタジオ録音があります。ありますというよりもあまりに有名なレコードです。オーケストラは当然ベルリン・フィルです。
これがLPの国内盤です。
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レコードを通して『ヴァルキューレに親しんできた世代の人々にとっては、フルトヴェングラー/ヴィーン・フィル盤(EMI)や、ショルティ/ヴィーン・フィル盤(デッカ)と並んで、大事なものであったと思います。
この『ヴァルキューレ』に続いて、1年に1作ずつ、『ラインの黄金』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』の順に録音されました。60年代後半にスタジオ録音されたこの『ニーベルンクの指環』は、良くも悪くもカラヤンの音楽の特徴を非常によく現しているものでしょう。
ところで、非正規盤でしか出たことがないのですが、この正規の録音の直後の1967年3月と、1969年5月の二つのライヴがあります。前者はザルツブルク・イースター音楽祭での、後者はメトロポリタンでのものです。
これら、特に1967年のものを聴くと、スタジオ録音とのあまりの違いに愕然といたします。
オーケストラはスタジオ録音と同じベルリン・フィルです。また、歌手もスタジオ録音とほぼ同じです。しかも、ほんの数ヶ月しか隔たっていません。
でも、そこで展開されている音楽は非常に熱いのです。
かなりよく知られてきていることだと思うのですが、カラヤンの演奏は、スタジオでレコード用に録音したものとライヴとの間には非常に大きな隔たり――時に別人かと思うぐらいの――がありました。この『ヴァルキューレ』の場合も相当なものです。
で、1958年のスカラ座ライヴです。
歌っているのは、ニルソン、リザネック、ズートハウス、ホッター。
伝統を受け継ぎつつ、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ、そしてカイルベルトといった人たちの指揮の下で、50年代から60年代にかけてのヴァーグナー演奏を創りあげてきた人々です。
それらの人々の歌唱を十分に生かしながら(スタジオ録音も含めて、後の時期の演奏では、カラヤンはより線の細い歌手を起用しています)、50歳になったばかりのカラヤンの覇気に満ちた音楽がここには繰り広げられているように思います。









