前回の記事の最後に紹介したのですが、半世紀ぶりに日の目を見ることになった、1958年にカラヤンがミラノ・スカラ座で指揮をした『ヴァルキューレ』のCDについて、もう少し書きたいと思います。


 カラヤンの『ヴァルキューレ』の全曲録音としては、1966年8月~12月のベルリンにおけるドイツ・グラモフォンのスタジオ録音があります。ありますというよりもあまりに有名なレコードです。オーケストラは当然ベルリン・フィルです。


 これがLPの国内盤です。


Mr.Mの雑記帳-090412_1805~01.jpg
 今は次のような形でCD化されています。

ワーグナー:ワルキューレ(全曲/カラヤン(ヘルベルト・フォン)
¥7,748
Amazon.co.jp


 レコードを通して『ヴァルキューレに親しんできた世代の人々にとっては、フルトヴェングラー/ヴィーン・フィル盤(EMI)や、ショルティ/ヴィーン・フィル盤(デッカ)と並んで、大事なものであったと思います。

 この『ヴァルキューレ』に続いて、1年に1作ずつ、『ラインの黄金』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』の順に録音されました。60年代後半にスタジオ録音されたこの『ニーベルンクの指環』は、良くも悪くもカラヤンの音楽の特徴を非常によく現しているものでしょう。

 ところで、非正規盤でしか出たことがないのですが、この正規の録音の直後の1967年3月と、1969年5月の二つのライヴがあります。前者はザルツブルク・イースター音楽祭での、後者はメトロポリタンでのものです。

 これら、特に1967年のものを聴くと、スタジオ録音とのあまりの違いに愕然といたします。

 オーケストラはスタジオ録音と同じベルリン・フィルです。また、歌手もスタジオ録音とほぼ同じです。しかも、ほんの数ヶ月しか隔たっていません。

 でも、そこで展開されている音楽は非常に熱いのです。

 かなりよく知られてきていることだと思うのですが、カラヤンの演奏は、スタジオでレコード用に録音したものとライヴとの間には非常に大きな隔たり――時に別人かと思うぐらいの――がありました。この『ヴァルキューレ』の場合も相当なものです。


 で、1958年のスカラ座ライヴです。

 歌っているのは、ニルソン、リザネック、ズートハウス、ホッター。

 伝統を受け継ぎつつ、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ、そしてカイルベルトといった人たちの指揮の下で、50年代から60年代にかけてのヴァーグナー演奏を創りあげてきた人々です。

 それらの人々の歌唱を十分に生かしながら(スタジオ録音も含めて、後の時期の演奏では、カラヤンはより線の細い歌手を起用しています)、50歳になったばかりのカラヤンの覇気に満ちた音楽がここには繰り広げられているように思います。




ヴァルキューレ/スカラ座ライヴ(1958) icon 左矢印HMVへ


Mr.Mの雑記帳

ヴァルキューレ/スカラ座ライヴ(1958) icon  左矢印HMVへ


Mr.Mの雑記帳

 本日4月5日はヘルベルト・フォン・カラヤンの101回目の誕生日にあたります(ちなみに今年の7月16日が没後20年にあたるのですが)。

 それでそのことを寿ぐために、半世紀の時を経て初めて日の目を見た、スカラ座での『ヴァルキューレ』のCDについて書きたいと思っていたのですが、2、3日前にたまたま名古屋市公会堂の前にたたずむこととなり、そうだ、これをまず書かなければいけないのであったということを思い出してしまいました。


 ちょうど50年前の1959年の10月半ば、カラヤンはウィーン・フィルとともに、大規模な世界演奏旅行に出発します。

 10月18日のニューデリーを皮切りに、ボンベイ、マニラ、香港、そして日本に来てから、ホノルル、それからアメリカ各地を巡ってからカナダに行き、11月23日のモントリオールが最後の公演地という、ウィーン・フィルとしてもそれまでに経験したことのない大々的な遠征でした。
 日本では、東京で5回、大阪で3回、そして、名古屋で1回カラヤンの指揮によるコンサートがあり(10月27、28、29日が日比谷公会堂、31日、11月1、2日が大阪フェスティバルホール、3日に名古屋に来た後東京に戻って6、7日が日比谷公会堂)、またNHKの公開放送のための演奏を旧NHKホールで行ったり、11月5日にはボスコフスキーの指揮でJ・シュトラウスの夕べが催されたりもしたようです。

 ちなみに、カラヤンがウィーン・フィルを率いて日本に来たのは意外なことにこの時だけでした。
 この時のプログラムは、ハイドンの第104番、モーツァルトの第40番をはじめとしてベートーヴェン、ブラームス、それに、ブルックナーの第8番などカラヤンの得意な曲を並べたものでした。


 それで、名古屋でのコンサートです。


Mr.Mの雑記帳-090402_1215~01.jpg


 これがこの前の記事に書いた「名古屋市公会堂」で行われたのでした。

 先日、このかなりの歴史的な建物の前にたたずんで「そうか、ここでカラヤンがウィーン・フィルを指揮した時から50年になるのだな」と思ったときに、ちょうど半世紀前のカラヤン/ウィーン・フィルと伊勢湾台風とのことを書いておかなければいけないという思いに突然とらわれたのでした。
 カラヤンとウィーン・フィルが来日する一月前に、伊勢湾台風という台風によって東海地方は未曾有の被害を受けました。実は、当時3歳だった私も、流されかけたのでしたが(突然の浸水でぷかぷかと浮き上がった畳の上で洪水であることも知らずにすやすやと眠っていたそうです)。
 それで、この時のカラヤン/ウィーン・フィルの東京と名古屋でのコンサートは『伊勢湾台風災害「NHKたすけ合い」特別演奏会』として開催されることになり、純益900万円が寄付されたのでした。
 カラヤン関係の文献でもウィーン・フィル関係の文献でもあまり目にすることがないように思いますので、どうしても書いておきたいと思いました。
 この時の旧NHKホールでのブラームスの第1番と日比谷公会堂での第4番を中心とした貴重な映像と録音が下のような形で出ています。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1959年日本特別演奏会 [DVD]
¥4,382
Amazon.co.jp


 また、この記事の始めのほうに書きましたが、やはり半世紀以上前のスカラ座での『ヴァルキューレ』という聴き逃せない録音が初めて聴けるようになりました。これはカラヤンとしては4種類目の『ヴァルキューレ』になりますが、演奏としては最も古いものになります。

 それも続けざまに二つのレーベルから出されました。音質については一長一短です。



ヴァルキューレ/スカラ座ライヴ(1958) icon 左矢印HMVへ


Mr.Mの雑記帳

ヴァルキューレ/スカラ座ライヴ(1958) icon  左矢印HMVへ


Mr.Mの雑記帳

 また機会があったら詳しく書きたいと思っています。



昨日、名古屋市でも有数の公園である鶴舞公園に行ってきました。

この公園の中に名古屋市公会堂という建物があります。

Mr.Mの雑記帳-090402_1215~01.jpg


1927年4月2日起工/1930年9月30日完成。
つまり昨日は82年前に起工された日でした。



建物の正面にある噴水塔。今の時期は水は出ていません。
Mr.Mの雑記帳-090402_1217~01.jpg
1月に放送されたドラマ『そうか、もう君はいないのか』に出てきた、若き城山三郎が後に妻となる人と出会ったところ(そして、一旦ふられるところ)です。


Mr.Mの雑記帳-SN3B0027.jpg

実際の出会いの場となったらしい図書館は、この公園に隣接する位置にあるのですが、この公園はおそらく若き城山三郎にとっては思い出深いところであったことでしょう。

この公園は桜の名所でもあるのですが、もう少しで満開という感じでした。


Ludwig Mの宝石箱

テレマン 協奏曲 ホ短調

モーツァルト 協奏曲第3番 ト長調

エルガー 弦楽のためのセレナーデ ホ短調

ブリテン シンプルシンフォニー


日時:4月12日(日)13:30開場 14:00開演

会場:三井住友海上 しらかわホール

無料


「名古屋法曹バロックアンサンブル」の第23回演奏会のご紹介をさせていただきます。


 この団体は、法曹界の方々、つまり、弁護士、検察官、裁判官、裁判所の職員の方々が集まって作られているものです。

 法廷では激しく対立して火花を散らしていただきたい存在である弁護士と検察官の人が、春の日の午後のひととき、心をひとつにして美しいハーモニーを奏でるというのは、また格別のものがあります。音楽ってほんとうにいいものだなとつくづく感じる時間が流れていきます。

 それに、裁判官や検察官の方々の、法廷でお見せになるのとはまったく違った緊張した様子を拝見できるのもめったにないことです。

 何年も前から、私にとっては、春のこの時期の大きな楽しみになっています。

 そういえば、私の同級生の弁護士N君は別のアマチュア・オーケストラでヴァイオリンを弾いていますし、教え子のY君はフルートを吹いています。法曹界に身を置いている人にはクラシック好きが多いような気がします。

 今年のプログラムの中では、私はブリテンが特に楽しみです。

 名古屋近郊にお住まいの方は、足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

本日2月23日は、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685-1759)の誕生日です。


ご存知の方も多いと思いますが、今年2009年はヘンデルにとっては没後250年というアニヴァーサリー・イヤーなので、そのような年の誕生日というのは、何か微妙ではありますが、やはり寿ぎたいと思います。

それで、たぶん没後250年ということもあって出されたのだろうと思われる非常に凝ったCDを今日は聴いています。


それは『エイシスとガラテア』をメンデルスゾーンが1828/29年に編曲したものです。メンデルスゾーンと言えば、20日前の2月3日がちょうど生誕200年の日であったので二重の意味でおめでたいものではないでしょうか。



ヘンデル(メンデルスゾーン編曲)Acis und Galatea icon 左矢印HMVへ

Ludwig Mの宝石箱
ちょうどこの時期のメンデルスゾーンは、『マタイ受難曲』の蘇演(バッハの死後忘れられていたこの曲を初めて演奏したのです)という音楽史上極めて重大な偉業に取り組んでいたのですが、一方でヘンデルのこの曲も編曲していたというのは驚異的なことのように思います。

まったく(ヘンデル+メンデルスゾーン)÷2という何とも不思議な心地よい世界が出来上がっています。

歌詞はドイツ語になっていて、姉のファニー・メンデルスゾーンが訳したようです。


ところでこの曲のドイツ語版編曲はもう一つあります。

モーツァルトによって1788年に作られていて、これにはK.566というケッヘル番号が正式に与えられています。

こちらはこちらで(ヘンデル+モーツァルト)÷2という他にはない至福の音楽が展開されています。

ドイツ語訳はヴァン・スヴィーテン男爵によるという説が有力ですが、はっきりとはわかっていません。

モーツァルト大全集 第24巻:編曲作品(全2曲)/オムニバス(クラシック)
¥5,610
Amazon.co.jp
ヘンデルの原作と聴き比べると興味は尽きません。