Starless -3ページ目

クイーン・アリゲーター

一匹の鰐が

卵から出て歩き出す

昂然と

頭をもたげ

世界を見渡し

最初の宣言をする

我ハ王ナリ

孤独も

悲しみも

畏れも

彼女には無縁

はじめから

血は冷えている

自分が美しいのか

醜いのかも知らないが

自分が なにか は

理解して

それが総てと知っている

精一杯に口をあけ

もう一度宣言する

我ハ王ナリ

世界は沈黙で

それに応え

彼女はそれに満足する

畏敬

造物主は

大したものだ

見たこともない造形

この世に

存在しない物質は

無いのではないかとすら思える

だとすれば

想像以上の最悪も

有り得ない筈の奇蹟さえ

可能なのかもしれない

世界は私の

美しい悪夢

シャングリラ

おまえが何処に行ったのか

私はわからない

知らないうちに

戻っているのか

それとも もう環らないのか

私は確かめる気も

捜す気も無い

何れ私も 同じ道を行くが

おまえに其処で遭うことは

きっともう 無いのだろう

おまえは

私の 本当の姿も

本当の気持ちも

知らないまま

行ってしまったが

私にとって

おまえの居たあの場所だけが

楽園だった と思っている

何を引き換えても

いいと思った

苛まれる日々の苦痛が

会うだけでやわらいだ

人知れず 繰り返す

おまえが聞くことの無かった

私の言葉


まっしろないとで

まゆをつくる

くちからさまざまな

おもいのいとを

くつうと

よろこびとともに

ながいながい

じかんをかけて

はきだしながら

からだをおおう

いまは

こもりのとき

いまはそれが

ひつようなとき

そのなかで

まどろんでいるように

そとからはみえるが

これは

おおいなる

たたかいなのだ

ビラヴド

蒼く仄暗い水の様な

静けさの中の澱

積み重なって 沈んでいる

様々のものたち

取り残された

捨てられた

忘れられた

そして

殺された

一度は名づけられ

今は 誰にも

呼ばれることの無い

かつては

何か だったものたち

おまえたちの為に

墓をつくろう

私が見たいと思う

美しい墓を

見た者が 皆

おまえたちを思い出し

この先 けして

忘れる事が無いように


墓碑銘はもう決まっている

修理

いいよ

こわれてても

つなぐから

かけてても

ざいりょうをみつけて

つけるから

ばらばらでも

ぜんぶあつめて

ひとつのかけらしか

みつからなくても

それを

しんにして

もういちどつくる

はじめとは

ずいぶんちがっても

おまえに

かわりはないから

わたしには

おまえがみえるから

千手

千の手が欲しい

彼らに届く手が

彼ら総てを抱ける手が

たくさんの聖なる者

一生に味わう総てを

一瞬で生きた者

彼らは既に

彼らの世界の終りを

見てしまった

何も与えてくれなかった世界

なのに

彼らはその

透きとおった瞳で

この世界を哀れみ

この世界をいとおしみ

救おうとさえする

恐ろしいほどの誠実さで

応えたい

伝えたい

触れたい

その為の

千の手が欲しい

世界の終りに響く音

時を越え

空間を

鋭利に切り裂き

響き渡る音

その亀裂の向こうに

見えるものは

色褪せた 古い記憶

安らぎと 哀しみの世界

美しい錯乱

深い吐息

諦念と希望が

計算された正確さで

刻まれる

煌びやかな絶望

絢爛たる祈り

私は望む

終末に響く音が

このようなものであることを



触れる手

おずおずと

触手が伸びて

私に触れる

身じろぐと

驚いた様に引っ込み

また そろそろと

伸びてくる

確かめる様に

位置を変え

寄り添う様に

押し付け

或いは

深く食い込んでくる

幾本も伸ばされた触手

細く可憐な それでいて

しなやかで強靭な

触手

或る時は歓びを

或る時は苦痛を

そして 時に

慈愛に満ちた救済を

私に与える

不思議ないきもの

私は思案する

理想的な共生のあり方を

私は願う

共に生きる道を



美しい森

なんと

深い森だ

足を踏み入れた時は

木々の梢から

射し込む木漏れ日に

心和ませもしたのだが

どうやら奥に分け入ると

その余裕はなさそうだ

しんとした

透明な闇

返ってくるこだまは

まるで別人の声

鳥は囀り

蝶は羽を煌かせ

甘い蜜の香り漂う

美しい森だが

毒草が無い訳ではない

木の実が総て甘い訳ではない

道が無い事も

迷うだろう事も

はじめから知ってはいたが

思ったより

ながい道行に

なりそうだ