Starless -2ページ目

総てを糧にする者

その者の名の語源は

館の主

最も醜く 最も美しい

総ての恥を誇りに変え

総ての汚物を黄金に変える

まだ今は

その虹色に光る

羽根の羽ばたきが

視界の隅をよぎる程度だが

なに 急ぐ事は無い

そのうち姿を顕わすだろう

其れの糧にならない物は

無いのだから

私が望む物の

かたちのひとつ

その成長を

愉しみに待っている



欺瞞

その生き物は

大きな身体と温和な性質を持ち

動作は極めて遅く

鋭い牙も爪も無い

愚鈍に見えて その実

極めて高い知能を持つ


緩やかな生を生き 

訪れる死は

抗う事無く受け入れる


保護しなければと叫ぶ

その同じ口で

多すぎる他の生き物の肉は食うのか

例えば

あの時の私は

まさにその生き物だったが

お前達は食ったのではなかったか

私の肉を


あの生き物たちは

お前達に保護されているのではなく

お前達の罪悪感を

受け入れているのだ

死を受け入れるのと

同様に

懐かしい風景

久しぶりに眺める

この景色

夜明けとも

黄昏とも見える

おぼろげな記憶のような

懐かしい空間

ふと 気づく

吹き渡る風の音だと

長い事思っていた


あの音は

私の血流の音

或る子供

私のなかに

或る子供が居る

高い高い塔の上に

一人

その子供が呟く


とにかく

俺はここから

降りる気は無い

ここ

私は ここに居る

熱に浮かされたように

ではなく

悲壮な決意と共に

でもなく

怯えながらしがみつく

わけでもなく

ごく 当たり前に

日常と共に

私に見える世界の

この風景の中に

私が居る


此れは

鎖のついた足枷では

無かったのかもしれない

壁は もう

崩れ始めているのかもしれない

 
眺めている風景は

時を経て移ろうこともあろうが


私はここに

居続けるだろう


総ての生き物たちの夢

狩りの雄叫び

出会いの歓び

慈しみあう温かさ


不意に溢れ出し

身を震わせて

全身であらわす

この思い


追われる恐怖

喪失の虚脱

滅びの諦念

そして

終りの予感


様々な感情を

色にして

形にして

うたにして

世界に託す

その願い


いつか きっと

なにかが

それを果たす


この世に

最後に

生まれてくるものが

担う役割


その日まで

それを夢見て

繰りかえされる

生の饗宴

侵蝕

日常に

染み出してくる

もうひとつの風景

じわじわと


不安と

期待と

ときめきと共に


おいで

もっと近くに

もっと鮮明に

私に見せろ

その全部を


ひとつずつ手放していく

私の存在を

必要としなくなった

ものたちを


私を満たせ

抗い難い獰猛さで

私の中を

その風景で一杯に


私が

生まれる前に居た世界

私が

滅びた後に見る風景

なめくじ

にんげんもね

いつか

なめくじに

なるんだよ

きおくも

ちえも

ことばも

なくして

てもあしも

なくなって

ぬるぬるの

ねんえきをだして

はいまわる

ぼくも

おまえも

いつかそうなる

こわいよね

だけど

ぼくは

がまんするよ

ぼくが

そうなったら

ふみつぶしたって

うらまない

おまえが

そうなったら

ぼくは

それでも

おまえを

だきしめてあげる

みえてきたもの

そとにあるすべてが

うちにあるすべてが

つぎつぎに

つながっていく

ひとつはすべてになり

すべてはひとつになる

アナザー・カントリー

この世界には

もうひとつの国が在る

それは

可視できない

もうひとつの王国

意識する しないに関わらず

それは在る

本当に 望むならば

本当に 必要ならば

その国は 姿を見せる

その者だけに

誰もが求め 

欲しているものは

そこに在る

その者の 望むかたちで

或いは

望まないかたちで

答えだと 気づかなくても

確かに在るのだ

豊饒と空虚

華麗と醜悪

歓びと恐怖が

そこに在る