「マジありえないっ!」
と、いう言葉をクラス中に瞬く間に伝染させて、いつもキャーキャー言ってた、ゆかりちゃん。
紫 と 書いて、ゆかり のゆかりちゃん。
高校の入学式で初めて彼女を見てあたしはびっくりした。
「せんせー、リボン忘れちゃったー!どーしよー!」
そんな言葉で、彼女の存在は一日目にして確立された。
私が入った高校は神奈川県内の私立女子校じゃ、上から数えて三本の指に入る、まぁ、賢い学校で、
優等生の寄せ集めと思ってた。
つまりは自分と同類か、それより上ばかりなんだろうと。
だけどその予想はちょっとちがった。
ゆかりちゃんは、上でも同類でもなくって、外の存在だったのだ。
ギャルで、茶髪で、騒がしくて、調子いい。
そんな、ゆかりちゃんは授業で結構ガツガツ質問した。
一方で、
つまらない授業はスヤスヤと寝てたり、
ガシガシ化粧をして、
コソコソ漫画を読んでたりもした。
こんな人が同じこの高校に入れるなんて!と衝撃をうけた。
正直に言えば、衝撃だけじゃなくて、いい意味で心をくじかれた。
辛い辛い思いをしながら、やっと私はここまできたってのに、こんな遊んだ脳天気そうな子が同じレベルなのかって。
でもそれは、悔しい、わけじゃなくて、むしろ清々しいくらいの発見だった。
力いっぱいの虚勢を、不意打ちの膝かっくんであっさり崩されて、突然天井が高くなったような感覚を覚えたんだ。
そしてゆかりちゃんは私にいろんな衝撃をくれた。
例えば、学期はじまってすぐあたりだったじゃなかろうか、
私がギリギリ60点くらいの数学のテストで、満点をとるという驚異的な偉業を成し遂げたのである。
ゆかりちゃんはテスト前になるといつも必死で勉強していた。
休み時間も先生のところへ行って、教えをこいたりしていてテスト期間中はスッピンで、おでこに冷えピタ貼って、眼鏡で、眉毛もない…なんてこともざらだった。
そんな努力の上での満点だった。
でもこれにはおまけがあって、
英語は20点という素晴らしい偏りかただった。
好きな科目でしか、パワーは見事に発揮されないのだ。
そんなとこがあるから、みんな余計にゆかりちゃんが好きだったんだと思う。
やりたくないことをやって、つくりたくもない笑顔で、成績を維持してきた私とは正反対だと思った。
やることなすこと善くも悪くもまっすぐだった。
あたしはその後、クラス替えを経るも、三年間、ゆかりちゃんと同じクラスで過ごすことになる。