今から23年か24年前になりますが、
アマチュアボクシングの競技ルールにひとつの項目が追加されました。
反則行為の追加で、
「腕を伸ばして相手の顔前に向け、視界を妨げる行為を禁ずる」
といったものだったかと思います。
わかりやすく言えば、
「相手に向けて腕を伸ばしっぱなしにしてはいかんよ」ですね。
奈落の底に突き落とされた気分でしたよ。
ほとんどの選手にはそのルールの追加はなんでもないことでしょうけど、
私にとっては自分のボクシングスタイルが全否定されたことになりました。
私のスタイルは、
1.相手に向けて左腕をめいっぱい伸ばし、前進を妨害して、接近させない
2.伸ばしたグラブを相手の顔の前で振ったり回したりして視界をさえぎる
3.伸ばした腕を小刻みに動かし相手をてつつきまわす
4.左腕を伸ばした状態のまま、右ストレートや右フックを打つ
5.その伸ばした腕をかいくぐって接近されれば、
すかさず自分も前に出て距離をつぶしてクリンチで逃げる
6.あるいは接近の気配がみえたところですぐに離れる
など、ほんとうに姑息でせせこましくろくでもない戦法ばかりやってました。
そのスタイルを自分のスタイルとして確立させ、
「自分の進む道はこれしかない」と、
その姑息スタイルをより強化することばかり考えてました。
フェザー級(後にライト級に上げた)まで減量していたのも、
そのスタイルを使うためです。
自分より身長の低い相手でないと通用しないためですね。
しかし、そのルール改定ですべてを失うことになり、引退を決意しました。
そうなると、慢心しきって相手をなめた挙句にばかな負けかたをした
神戸大会が最後の試合となってしまうのかとのとまどいもあったのですが、
姑息な道を歩み続けた自分にはそれもふさわしいと変な納得をして
以降の試合出場を断念、選手を引退することにしました。
( つ づ く )