ボクのカレートラックのLuckDishがオープンした日だった。当初は起業計画時から数ヶ月でオープンできると楽観していたけど、実にオープンまで1年半かかった。
カウントダウンの花火があちらこちらであがり夜空をカラフルに照らす下、ビーチ沿いにトラックを停めて初めての営業開始。花火の激しい音のせいか、待ちわびたオープンの瞬間を迎えたせいか胸がドクンドクンと振動しているのが自分でもわかった。
トラックのサイドドアを開けてお客さんを待つ。
誰もこない。
新年を祝いながら楽しそうに歩く人たちは大勢いるが誰もボクのトラックに目を向ける人はナシ。
ビーチからの冷たい海風だけが吹いていた。
そんな中、1人の男性がやってきた。
「コーラを1本もらえるかい?」
ボクは記念すべきお客さん第1号になる男性に声をかけた。
「カレーもどうですか?おいしいですよ!」
男性は申し訳なさそうに
「いや、いいよ。パーキングするための小銭が欲しいから両替してほしいだけなんだ」と$1.50をボクに手渡した。
肩透かしをくらったけど、それでも人生で初めて起業して得たお金だ。大事に大事にレジの中にしまった。
そんな時に「ちょっといいかい?」と別の男性の声。さっそく2人目のお客さんだ!と喜んだのもつかの間。警察の制服姿が目に入った。
「ここではフードトラックの営業は許可していない。いますぐ店を閉めて出て行きなさい。さもないと罰金のチケットを渡すことになるぞ」
店を開けてから30分もしないうちに強制退去を強いられた。フードトラックならどこでも営業できるのだと思っていたボクの知識不足。
結局その日はコーラ1本の$1.50が総売上。
ガソリンや諸経費を考えればもちろん赤字だけど、ようやく踏み出した第一歩。
$1.50以上の価値のある営業初日だった。
