押井守と映像の魔術師たち | 原型師は燃えているか?

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見せてもらおうか そのオヤジの奮戦とやらを

八王子市夢美術館の「押井守と映像の魔術師たち」展に、押井ファンの院生と一緒に行って来ました。
http://www.yumebi.com/exb.html

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大学の掲示板に貼られたポスターを見て、これは観てみたいなと思っていた展示です。
その時から、この院生と一緒に行きましょう!と申し合わせていました。
いろいろな学生と話をして、話の合う仲間をちゃくちゃくと見つけていますが(笑)、私の人生では話の合う人が必ず周りに居る(探し出せる?)ようです。

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私は押井作品の熱狂的なファンではなく、パトレイバー劇場版シリーズやGHOST IN THE SHELLシリーズは好きで、DVDを買って何度も観ているという程度でした。
その後、監督作ではありませんが脚本を書いた『人狼』も相当気に入っていた所、一昨年の『スカイクロラ』が個人的大ヒットで押井作品を再評価してみよう、という気になっていた訳です。

今回の展示は押井さんの希望で、立体物を中心とした展示にしたという由。
立体が6割、残りは平面資料という感じです。
一番驚いたのは、企画で消えた『ガルム戦記』の参考用立体物が大量に展示されていた事です。
この立体の出来と数で、どれだけ力が入っていた企画だったのかが伺えました。
同時に、やはり押井さんは「こっち側」の人間だな。。と確信できたのも収穫(笑)。
「こっち側」とは、模型マニアという意味です。
高名な竹谷さん(とそのスタッフ)の担当された造型物も複数展示されています。

でも、実は私が一番注目したのは、平面の展示物でした(笑)。
前の学生時代に寮の皆と一緒に観て「なんじゃこりゃ!?」と呆れた、テンタマこと『天使の卵』の生絵コンテが展示されています。
こんな古い作品の生原稿が残っていた事に少々感動。
(作品は感動しなかったけどww)
このコンテは鉛筆で描かれているのですが、そのベタ部分の塗りつぶし方に氏の性格が現れているように感じました。
良く言えば几帳面で丁寧、悪く言えば偏執的な律儀さ、という感じ(爆)。

その後の作品は物により、生原稿の設定資料が展示されていました。
これは素直に感動(笑)。
どれだけ鉛筆を尖らせて、誠実に描いているのかが伝わって来る資料でした。
また、その巧みな線は感動ものです。
日本のメインスタッフ、どんだけレベル高いんだよ!!という。
『人狼』の美術設定もあったのですが、鉛筆線を消して描き直した跡も見る事ができ、生原稿でなければ味わえない感慨を持ちました。

一番興味のあった『スカイクロラ』は、残念ながら生原ではなくコピーされた資料の展示でしたが、草薙が基地移動で飛んでいるシーン(ユーイチを見上げているシーン)のレイアウト図があり、これには少々面食らいました。
画面では黒く潰れて殆ど見えないコクピット後席が、あんなに詳細にリアルに描かれていたなんて。。
あの機体はユンカースJu88やハインケルHe219を基にしているフシがありましたが、リアルなリベットの並びを始めとして細部描写がハンパありません!
(飛行機マニアでないと、この感動は判らないかも。。)
コピーのコピーでいいので欲しかったくらい素晴らしい絵でした(笑)。

とどめは『GHOST IN THE SHELL』の生セルと背景の組み合わせ展示。
押井さんは犬が登場しているシーンだけ個人的に保管していたそうですがw、デジタル普及前の生画面が見られて良かったです。
少佐が水路を船で移動しているカットで、セルはA~Cセル(背景の上にセルを複数枚重ねて撮影するのですが、Aから順番にナンバリングされます)くらいで、その下にある背景がすごい。
私は背景画出身でもあるので、この描き方を長時間観察しました。
劇場の大画面と作品の性格による為か(押井さんの性格か?)、やはり細部描写の繊細さが尋常ではありません。
ほとんどの線が「みぞびき」で描かれているようで驚きました。

※みぞびき=溝引きとは、塗る筆とは別に棒状の物--専用のガラス棒もある--を箸のように持ち、棒だけ定規に当ててまっすぐ線を塗る(曲線も描けますが)技法です。

このカットは映画では2秒くらいしか映りません。
ここまでやるから、あの画面の密度が生まれるんだ。。と感動するやら感心するやら。。。
この背景を見れただけでも来た甲斐があったと思いました。

規模はそんなに大きくない展示ですが、真面目に観ていこうとすると2時間では足りないと思います。

あ。。どうでも良い事ですが『アサルトガールズ』で使われた銃のプロップも1挺だけ展示されていました。
押井さんの私物を改造と説明書きがあったと思いますが、団子キャリングハンドルの電動FAL(大陸製?)にM60のアッパーハンドガードとM203擲弾発射機、ドットサイト?を付けた物です。
『イノセンス』のクライマックスでバトーが使っていたのもFALっぽかったと思いますが、やはり選択がマニアですね。
私もFALというかL1A1小銃が好きです(笑)。