創作小説「お供のミライ」後編 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

こちらは後編です。**

「大きい方がいいに決まってるじゃないか!
大きな葛籠(つづら)をおくれよ!」

「いけませんお婆様!大きな葛籠には魑魅魍魎が!」

「ならばポチよ、お前が退治すればよかろう!お前で無理なら息子達に任せればよい。葛籠は両方貰っていくよ。」

「ポチよ!次はどこを掘ればよい?さぁ早くワンと鳴け!」

「お爺様、この一帯に宝はもう…。」

「ならば明日にでも関所を越えるぞよ。支度せい!」

「長旅はお身体に障ります…。」
****

「犬よ、これがお前が望んだ未来か?これがお前の忠義の果てか?」

「『どんな宝も嗅ぎ分ける鼻をください』と願い出た結末がこれか?」

「二人は手前の主です」

「そうだな。婆さんが桃を拾う前からお前は我が家に仕えていた。
お前の主は儂ではなくジジババ達だ。
だから打出の小槌の願いもジジババ達の幸せの為にってか?
犬よ、お前自身は幸せなのか?」

「主人の幸せが手前の幸せであります。」

「…猿は今しがた出ていったぞ。」

「さ、猿が…?おのれ不忠者が…!」

「もうお前達に苦言を提する者は居ないよ。犬よ、いつでもウチに来いよ。」

「いえ、犬は二君に仕えません。たとえ二人を看取った後でも…。」

「二人が亡くなったら桜の木の下にでも埋めてやれ。灰を投げれば冬でも花が咲くかもなあ?掘り返すなよ?」

「ご冗談を…。手前は最期までお二人に付き従います…。」
****
「あらあら、やっぱり二人とも袂を分かったんやねぇ、『犬猿の仲』言うとおりやわ」

「お前もいつ出て行ってもいいんだぞ?」

「嫌やわぁ、ウチがそないなこと思うてるわけないのにイケず言うてからに。」

「儂はお前だけが居てくれたらいい。」

「ウチも桃はんと永遠に寄り添えたら何も要りまへんぇ。
桃はんとウチの願いが同じやと知った時、天にも昇るほどの嬉しかった…。

…それがウチの一番の宝や…。
ありがとうな…。」

「おきじ…儂の方こそ有難う。
『人間になりたい』と言ってくれて。」

「ウチこそ有難う。『おきじを人間にしたい』って言ってくれて…。」

「なぁ、おきじ…。儂達は鬼退治して良かったのかなあ?」

「ウチはお釈迦様とちゃいますぇ。
ただ、桃はんが鬼退治に出てくれなんだら、ウチらは出会いませんでした。ただ天下を取りたがる猿も、老夫婦に尽くす犬も、桃はんを好いたウチも全ては一夜の夢かもしれませんぇ」完