こちらは後編です。
前編を読まれていない方は前の記事をお読みくださいませ。
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別になにも変わらない日が続いた。
どうやら私達四人以外に
「願いを叶えてくれる使者」
の夢を見た者の話は聞かず、日常は過ぎていった。
夢はただの夢として終わるのかと思った一週間後…。
「あさひ、幸成、博司、私やったよー!」
何気ない朝の教室に響く奏の喜ぶ声。
世界征服を願った彼女の夢が叶ったにしては、下々の私達に変化はございませんが!?
「これ見てよ!この前応募したコンクールの結果が来たの!」
「ワールドユニフォームデザインコンテスト?
ええと…CAの制服部門で奨励賞!凄いじゃない!」
「へへん、そりゃグランプリや優秀賞にはほど遠いけど、世界同時募集のこのコンクールでただの女子高生の私がこの結果だよ!もう嬉しかった~。」
「おぉ~世界一のデザイナーの誕生の瞬間か?」
「うん、まだまだこれからなんだけど…。道が拓けたっていうか…。ほら、私の親進路に反対してたし。」
「奏さんは喜ばしい結果ですが、僕は不甲斐ない結果で…。」
対照的に低いテンションなのは博司。地球の支配者にはほど遠い。
「今のままでは医学部は無理だと。歯学部に変更した方が良いと予備校から言われたよ…。」
「そっかぁ、博司ほど成績優秀でも医者って難しいんだね。」
「でも、何だか解放された気もします。すっきりとした気持ちで歯学部合格に頑張れそうで。」
「おぉ~前向き~!」
「あれ?なんか可笑しいね。博司は『支配者』から『歯医者』だもんね。」
「ダジャレかよ!」
「それを言うなら奏さんも『世界征服』が『ワールドユニフォーム』だから…『世界制服』じゃないですか!」
「苦しいなぁ…。」
「お前勉強のし過ぎでお笑いセンスないなあ…。」
現実的な舵切りに安心する日常。『使者』はどうやら少しずつ『ズレて』願いを叶えてくれたみたいだ。じゃあ、幸成の『独裁者の妻を貰う』は?『私の核のボタンは?』
放課後、真剣な表情で幸成は私を呼び出した。
でも…私への告白じゃなかった…。
「なぁ、あさひ。俺、本当はお前の妹のまひるちゃんが好きだ!教室の四人の友情がギクシャクしないかと心配で…。」
「口の悪い妹だけどよろしくお願いします。」
畜生、「毒妻者」かよ!
帰宅したら私宛の小包が。『核の牡丹』かよ!
この牡丹を育て上げたら世界を滅ぼせるかなぁ?完