「使者よ…願わくば…
『永遠の命』なんて虚しいだけよ!
やっぱり独裁者よ!世界征服だわ!地球の支配者にさせて!私の胸三寸で核のボタンを操るのよ!さぁ、使者よ!私に核のボタンを与えなさい!!」
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「あさひ!まひる!起きなさ~い!遅刻するわよ~!」
そこで夢は終わり、私は現実に戻された。
「お姉ちゃん、また夜中までゲームしてたんでしょ?せめてオンラインでいい男見つけたら?」
「あんたみたいに朝帰りするくらいなら、男なんて要らないわよ!」
…全く。同じ双子なのに、毒舌の妹ばかり何故モテる?
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テレビニュースを見ながら一家四人の朝食。
「まぁ、差出人不明の『植物の種』ですって。怖いわねぇ…。」
「タダでくれたなら育ててみてから捨てても悪くないな。」
「やめてよパパ!麻薬の種とかだったら逮捕されちゃうよ。」
のんびり屋さんのパパと、おっとり屋さんのママ。
毒舌家の妹まひるに、ごくごく平凡だけど危険な空想?が趣味な私あさひ。こんな家族に私の夢の相談なんて出来ず…。
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「ウソー!?私も同じ夢みたよ!『使者』が願いを言えって。」
「俺も!」
「僕もです!」
男女仲良し4人組みがまさか同じ夢を見た奇跡!あり得ない力が働いてるとしか思えないわ…。
で…奏(かなで)は何てお願いを?
「あたし達親友だから、夢の中でもあさひと同じよ。世界征服って言っておいたわ!まぁ、現実的にはデザイナーになれたらいいんだけどね~。はぁ、この前応募したコンクールで良い結果でないかな~?」
「僕もこの世の支配者になりたいと願いました。まぁ、願いは願い、夢は夢で地道な努力とは別です。医学部に合格したい気持ちは変わりません。」
「博司が支配者なんて言い出すなんてな!俺の夢だけちょっと違うんだよな~?」
「幸成(こうせい)は何て?」
「『極上の妻が欲しいって願ったんだ。』そしたら、使者が『汝は独裁者の夫となろう』って…。」
「ウソ?じゃあ、幸成は私かあさひちゃんと結婚するってこと!?だって、私は世界征服で、あさひちゃんも核のボタンだよ!?しかも四人が同じ『使者』の夢を見るなんて…。」
「ないない、私と幸成だなんてー!なんであんただけ結婚願望なのよー!四人で地球を分割しようよ~?」
…内心嬉しかった。奏ちゃんの可能性があるにしても、私が独裁者で幸成がその夫。あり得ない空想に魅惑のエッセンスが加味された。
続