元騎士団長オメガ=カタストロフィの心配
「じゃあ、行ってらっしゃい。」
精一杯の笑顔で送り出した私。
少しはセイジの奥さんみたいに振る舞えたかなぁ…?
今日、セイジは久しぶりの休暇を取った。
このシオンの村に戻ってきてからずっと復旧作業のことで働きっぱなしだったから安心した。
そしてその休日は、あたしとではなく、12歳のフィーネちゃんと釣りに出ることにした。
提案したのもあたし。漁師のトクじぃさんに舟を出して貰って、水先案内人には半魚人(シーマン)の大介(ダイスケ)さんに付き添ってもらった。
セイジもフィーネちゃんも強大な魔力の持ち主だから、少々の水棲モンスターと遭遇しても心配ないけど、二人とも舟を操れないからね(笑)。
非戦闘員のトクじぃさんが釣れるポイントを案内してくれるだろうし、人間との付き合いが長い大介さんも居れば安心だわ。
あたしは帰りを待つことを選択した。
「さぁ、帰ってくるまで時間は限られてるわ。
ねぇ、アビス…。」
「あいよ、『セイジが帰ってきた時の晩御飯を作るの手伝って』かな?」
「ええ!?なんでわかったの?武道家のアビスが何で読心の魔法使えるの?」
「別に魔法なんて使ってないわ。セイジとフィーネを送り出す作り笑顔を見てたら、『あぁ、無理してるな』ってすぐわかるわよ。」
「アビス、やっぱりあたし無理してた?」
「まぁ、冒険の時に比べたら『勝ち組女の余裕』が出てきていいんじゃない?
剣術と同じくらい女子力を磨こうとするあんたは嫌いじゃないわ。
でも、そこまで心配することないんじゃない?
実際に大魔王の謁見の間の扉を開ける直前に、セイジは貴女を、オメガ=カタストロフィを選んだのは事実よ。
私やフィーネちゃんは勿論、可愛い可愛いサラよりもね。」
「うん、それは十分にわかってるわよ…。」
「じゃあ、もっとセイジを信じてあげたら?あいつはいい男よ。
数えきれないほどの男を見てきた私が言うんだから間違いよ。」
「うん、わかってるわよ、セイジが問題じゃないのよ。あたしは…。」
「あんた…まだサラに劣等感抱いてるの?自信持ちなよ、選ばれたのはあんたなんだよ!?」
「わかってるわよ…。ただ…サラはホントに自分の現状を受け入れて、あたしとセイジを祝福してくれるのかな…?って…。」
「まぁね…。サラの場合、悪意が無いだけ厄介なのよね。ただサラがまだ本気なら私はどちらの味方も出来ないわ」