俺、火依深 聖児(ひよりみ せいじ)。
このファンタジーに転生して、勇者セイジとして大魔王を倒す直前まで踏み込んだんだけど…。
俺は「世界の半分を貰うことにした。」
勇者の役目は世界に平和をもたらすこと。
大魔王を倒すことが全ての目的じゃない。
まずは勇者の俺と女騎士のオメガが生まれ育った漁村「滅びの村シオン」を勇者一行と魔法軍の混成部隊で復興出来るかだ。
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「セイジ様、見てください、この鉢植えを!」
王族出身でシスター見習いのネハン=サラ=ソージュは回復呪文が得意だ。
復興計画の骨子「回復呪文と防御呪文による緑化計画」は、このサラが居てこそだ。
「遂に蕾をつけたんだね、花を咲かせるのが楽しみだよ。」
「…ホントに申し訳ございません、セイジ様。
セイジ様の崇高な志も理解せずに疑ってしまい…。」
「いいってことよ。あの状況なら誰だって欲に目が眩んだと思うさ。」
「戦い勝ったとしても、また新たな戦いを生むことを考えれば、美しき村を作ることの方が真の終止符が打てるかと思います。
その日が来るまで私は付き従います!」
「サラ、お前の気持ちは凄く嬉しいよ…。
ただ覚悟しておいてくれ。俺の計画の第二段階は、王族のお前には酷な…。」
素直で従順なサラ。
彼女を伴侶として選び切れなかったのは、幼なじみのオメガの存在もあるが、サラが王族出身ということだ。
そう、俺が次にやろうとすることはきっと彼女の可憐で清楚な心を傷つける。
理解はしてくれるだろうが時間はかかる。
そんな中でオメガよりもサラを選ぶなんて自己欺瞞だ。
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「大変です!王国の兵士を名乗る男達が才蔵さんの娘さん達を…!」
復興が進むにつれ、シオンの村にも人が戻ってきた。
最初は魔王軍の復興事業に疑いの目を持ってた人も輝きを取り戻そうとしる村と献身的に働く勇者一行と魔王軍に惹き付けられてきた。
その矢先にこの王国の兵士だ。
畜生どもが…!復旧しだした途端に噂を聞きつけて権利を振りかざしてきやがったか…!
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「やめろ!才蔵!人間に手を出すな!」
「お言葉ですが大使、こいつらは俺の大切な娘達に…。」
「シオンの村が怪物の村になったと聞いたから調査に来てみれば、化け物の娘がお出迎えしてくれたんでね。
お近づきの印にちょ~とスキンシップをしただけじゃないか。
お前がオヤジか。いいぜ、王国の兵として怪物村を討伐する理由になる」