アンドロイドは人間と同じ様な「人格」と「自我」を持つが、得意分野においては専門の「ハード」であり「ソフトウェア」であり、情報を検索し共有する「パソコン」であり「スマホ」あり『意志を持つネット端末』でもあった。
車の自動運転など、この時代には簡単なものであった。
専用ソフトウェアを車に内蔵させるか、車をケーブルで繋ぎ、自動運転のソフトをインストールしたアンドロイドを、運転席に座らせるかだ。
しかし、在原長秋が運転するポルシェは相当の年代物であり、車本体を大改造しなければいけなかった。
「やっと私の人工知能と規格があるソフトウェアが見つかりましたわ。
長秋様のお車は大変希少ですので…。」
「キャサリン、ここ数日大人しかったのは、僕のポルシェを自動運転出来るソフトをずっと探してたのか?」
「はい、苦労した甲斐がありましたわ♪
これで明日からは私が送迎致します。
これでもう、秘書のクセに、ただ助手席に座っているだけのブリジットさんに苦労させられることはありませんわ。」
「…お前は…お前の人工知能が…自動アップデート機能が『それが合理的』と判断したの…か…?」
「ええ、勿論。主である長秋様自身にハンドルを握らせることがどれだけ危険なことか!
自動運転ソフトの安全性は人間の知覚機能や運動性能よりも…。」
「僕の車だ!キャサリン、君の運転は必要ない!明日からもハンドルを握るのは僕だ!」
「そうです、ミス・キャサリン。貴女は調理型アンドロイドです!ただのクッキングロボットが車の運転だなんておかしいです!」
黙っていられなかったブリジット。主である長秋に対して身体を張ってでも阻止する覚悟だった。涙はまだ流していない。
強い怒りの眼差しだった。
「私は長秋様の身体の健康と安全をお守りする義務があります。
運転だけの問題ではありません。
長秋様のお身体は私が提供したお食事以外の粗悪な栄養により…。」
「そんな所まで貴女が関わらないで!
あそこは長秋様の大切な…。」
「やはり知っていたのですね、ブリジットさん。それは好都合です。
お店を絞り込むのはまだまだ時間がかかりそうでしたが、貴女から聞き出した方が早そうですわ。」
「やめろ、キャサリン!ブリジットに手を出すな!これは命令だ。」
「長秋様、害を為すのはそこのポンコツです。私は主本人に不利益と判断した命令は拒否します!」
「違う!君の主人は父さんだろ!」