「つーわけで暫く厄介になるぜ、柿本。」
「俺達は構わんが、人間の方が家出するなんて笑えねぇ冗談だな。」
「まぁな、人間が機械に駆除されることを極度に恐れる『スカイネットシンドローム』をただの気分的な病気で片付けられなくなったな。」
「は~い、アタシも兄貴とずっと二人より、あっきーやブリジットちゃんと四人の方が楽しくていいけど、うら若き乙女の居る所に泊まりに来てるっての忘れないでよね!」
「本当に申し訳ございません、柿本様、樹乃様。
突然押し掛けてしまいまして。」
「いいってことよ、だが、これで中途半端に帰れなくなったのも事実だな。」
****
数時間前の在原邸
「答えろキャサリン。君の行動原理及び最優先順位は、僕の父さんだろう?
だからこそこんな仕打ちを…。」
「…その質問の回答は拒否させて頂きます。
私は長秋様の健康と成長の妨げとなる物は全て排除させて頂きます。
それが長秋様自身の意志によるものだとしてもです!」
「ちっ、父さんもとんでもないフランケンシュタインを作ったもんだぜ。いや、ターミネーターかな?」
「長秋様、キャサリンが言うことを聞かないなら、廃棄申請をして回収して貰えば済むことです。」
「そうだな…。キャサリン、お前は本来は優秀な調理型アンドロイドだが、お前自身がこういう風に進化する道を選択したのは欠陥だ。
お前の電源を落として廃棄申請をする。」
「ご都合が悪くなれば私を廃棄ですか?
いいでしょう。ですが、医者を目指したというのに、旧型アンドロイドにジャンクフードと旧世代の車に溺れた挙句、何も成し遂げられなかったとなれば…。」
「『男子一生の本懐にはほど遠い』と天国の父さんが嘲笑ってるとでも言いたいか?」
「いえ、非常に残念でありますと申し上げたいだけです。」
「長秋様、こんな壊れた人工知能なんか相手せずに廃棄が駄目なら私達が屋敷を出ます!
無人島でも無医村でも長秋様となら何処へでも!」
****
「それで二人して俺のとこまで逃げて来たって?ご苦労なこった。
で、そのキャサリンちゃんに負け犬扱いされたくなきゃ、一人前の男として一旗あげねえとなぁ。そういう意味じゃ研究所に配置転換されて良かったじゃねぇか。」
「長秋様、柿本様。今、私に突拍子もないアイデアが浮かびました。
私のこの人工細胞に病原菌を感染出来ますか?
世界初のアンドロイドの患者。その私を治療するのです。」