迷い、悩み、戸惑いながら己の未来を想像し、創造するアンドロイドのブリジット。
その姿は見る人が見れば滑稽で道化に映るかもしれない。
だがその確固たる意志は、主である長秋に伝わった。
「『恋人ロボットにはなりたくない』…か。
いい答えだ!
じゃぁ具体的にやりたいことは?」
「やりたいこと…。長秋様のお役に立ちたいのは当然ですが、私は執事であると同時に秘書でもあります。
そうですねぇ、やはり医師として活躍される長秋様のお力になれる秘書型アンドロイドでありたいと思います。」
「僕を助ける秘書か…それは心強い。けど…僕が勤務する病院にも勿論…。」
「はい、キャサリンほどではありませんが、ナース型アンドロイド達はやはり旧型の私を役立たずだと…。
私はただカルテや器具データ管理をするファイルに過ぎないと陰口を叩いてるのは知っています。
同じ人間などと形容するのはおこがましいですが、私に人の感情を当てはめるなら、『歯痒い』というワードが最適かと思います。
長秋様、私は…本当にどうすれば…。」
「答えを急ぐ必要はないさ。
判断材料に乏しく、人工知能が不正確な回答しか出来ない時は『解りません。』と言っていいと指針を示したのは、画期的だったと僕は思う。あの分岐点こそが第一次アンドロイド革命だったと思う。
勿論、第二次アンドロイド革命は『自動アップデート機能』だと思うが。」
「長秋様、一つだけ質問させてくださいませ。きっと、長秋様のお答えが、今後の私の選択に大きな影響を与えると思うのです!」
「なんでも答えてあげるよ。質問はなんだい?」
「はい、ありがとうございます。
長秋様は、何故、お医者様に?」
長秋は手にした(一応はブリジットの為に注文した)コーヒーの薫りを堪能しながら、
「今の時代、人類の職種は限られてるからね。
殆どの人間は『管理人(マネージャー)』という、アンドロイドの仕事を見てるだけの仕事に就いてる者が多い。
人間が人間らしく働らける場所なんて、芸術、芸能、スポーツ、アンドロイドの開発、そして人間が人間を看る医師だ。
そうは言ってもアンドロイド医師のと修理監視日々を費やす人間の医師ばかりだけどね。
勿論、高度で繊細な技術ではアンドロイドには到底適わない。
だが僕は、人間の医師が人間の患者を顔を突き合わせて診察する現場に可能性を求めたいんだ。
時代錯誤と言われようが、僕は『医は仁術』だと信じてる。」続