「自動アップデート機能」はアンドロイドに革命を起こした。
そしてそれは即座に人間社会の構造をも大きく変えた。
今までの人工知能を持つアンドロイドは、あくまでプログラム通りにしか行動、判断が出来ず、常に人間による修理点検及び、方向・指針付けが必要だった。
しかし、自動アップデート機能を備えた新型アンドロイドは、自らの判断で自己を向上することが出来、己が必要と判断すれば、情報やプログラムだけでなく、自らの身体さえも改造・改良を施した。
「全てのロボット(アンドロイドは人間型として全ロボットの一部)は人間のために」
と、仕える人間の主に最も有益なる選択を求め、常に至高のロボットであろうとした。
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「今日も朝からキャサリンは辛辣だったようだな?」
愛車のポルシェのハンドルを握りながら、主人である長秋は、助手席のブリジットに話しかけた。
「聞いていたのですか!?
申し訳ございません、長秋様。
朝からお見苦しい所を…。」
「君が謝ることじゃない。
僕は自分の意志で早目に屋敷を出たかったんだ。」
と言って大きく右にハンドルを切り、大通りから外れた。
「長秋様、そちらは病院へのルートからは遠回りです!」
「いいんだ、プレゼンの時間までに、君と寄りたい店があるんだ。」
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「ハンバーガーショップ?」
寂れた路地裏にポルシェを停め、傾いたMの看板のある店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ、店内でお召し上がりでしょうか?」
「あぁ、ダブルチーズバーガーセットをコーラで。この娘にはホットコーヒーを。」
「長秋様、私には人間の食事を『食べるフリ』をするフェイク機能は備わってませんが…。」
「いいんだ。温かいコーヒーは両手で温度を味わうんだ。
それなら出来るだろう?」
「はい。確かに私の手の平には温度感知器は備わってます。」
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「…随分と…標準的なレストランとはかけ離れたお店なのですね、長秋様。」
「君の言語ファイルにも『ファーストフード店』なんてヒットしなさそうだな。
そうだな、『ジャンクフード、21世紀、健康』で検索してみな。」
「畏まりました。検索スタート…。
キャア!…シェフのキャサリンの脳内がショートしそうな歴史的事実が…!」
「はは、そうだな。文明社会に嘆く僕みたいな懐古中毒が、ここで昔ながらのバーガーと接客目当てで足を運ぶのさ。」
「私と同じ旧型…ですね。」続