暴君「普通」様が誕生されました。
以後、若者達を中心に、君主様に魅了される者が続出しました。
何よりも「暴君・普通様」は勤勉であります。
状況を選びません。
平民が困った時ほど助けてくださります。
面識の無い者同士が共通認識をすり合わせる時には獅子奮迅の働きを致します。
会話の途中で片方が「普通は~」と切り出すだけで万事OKなのですから。
客と店員の関係でも顕著であります。
お客様は自分の認識を疑いすらしません。
ありとあらゆる商品やサービスの中から最適な者を選択する思考を半ば放棄して、
「フツーのにして。」
とさえ言えば万事OKです。
****
もう10年ほど経過するでしょうか?
テレビ界から消えたS田S助が、塾か通信教育だかのCMで、
「○○君の国語の成績は『少し普通です。』
算数の成績は『凄く普通です。』
理科の成績は『かなり普通です。』」
と、担任から我が子の成績の報告を受け、
「教育ってなんや?」
と問いかける、風刺の効いたCMを記憶しています。
うん、本当に笑えない時代が来てしまったかと思います。
「暴君・普通様」は絶対君主に相応しい妃がおられます。
内助の功で支える妻の鑑です。
暴君「普通」様が滞りなく職責を全うすることを全力でサポートしています。
何が凄いって、完全に裏方に徹っしているので、サポートしてることすら悟られないのです。
その妃の名前は…「忖度」
****
忖度妃は万能です。
夫である「普通」を
「不戦勝の帝王」にしたのですから。
若者が枕詞に着けたがる、「普通にありえる」「普通におかしい」「普通に面白い」
といった世界終焉を象徴する上記の言葉達は必ずしも、
「世間一般に考えに照らし合わせて」ではなく、
「自分が回答するに当たって、何の忖度もしなければ~」
という意味が込められてるから厄介極まりない。
要訳したら「しがらみ抜きに答えるけど~」とか「受け狙いとか私個人の趣味嗜好は置いといて~」というニュアンスで語ってるから悪質なんですよね。
「普通」様をお育てになった倫理様と道徳様は、「常識妃よりは良識妃になさい」と言われてたのですが…まさか忖度妃をお選びになるとは…。
****
ふう、ここで愚痴を言っても仕方ない。私、閑職の執事「哲学」は今日のことを海外の親友であるマナー君とエチケット君に相談してみるとするか。
(了)
以上、フィクションでした。