ブルーキャット (最終回) | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

ムード盛り上げ楽団は、見事に私の本心を浮き彫りにした。

私は伸太さんの母親代わりになりたかったのだと。
テストの成績だけを見て叱るお母様よりも、無条件に四次元ポケットから未来道具を出して甘やかすドラちゃんよりも、私自身の手で、この野比伸太さんという脆弱過ぎるほど優しく逞しい男性を教育したかったのだと…。
これも一つの愛だと思う。
でも過ぎ去った時間は戻らない。
彼はもう既に自分の両足で大地を踏みしめて居るのだから…。

そんな優し過ぎる彼は今、私の四次元ポケットの中に居る。

出来杉防衛大臣を、大使館職員の雁野さんから守る為。そして蛮行に及ぼうとする彼をも守ろうとしている。
ライフル銃を構え、私の四次元ポケットの中に潜み、スナイパーよりもスナイパーらしく自分を押し殺し続けていた。

「何も起きずに晩餐会が終わってほしい。伸太さんと私の取り越し苦労に終わってほしい」

という私の切なる願いは脆くも崩れた。

「認めない、認めないぞ!世界平和の足掛かりとなる交渉が、出来杉の手柄なんて!僕はあいつなんかより優秀なんだ!」

和やかな会食の席で突然、奇声を挙げてナイフとフォークを振りかざす大使館職員。
出来杉防衛大臣に僅かな隙が出来た。少し離れた場所から剛田防衛副大臣が「伸太!」と叫んだのが聞こえた。
ポケット内の伸太さんはずっと雁野さんに照準を合わせていた。実弾でなく、デモ対策用ゴム弾をエムポパさんから用意してもらってたことも知っていた。
でも…それでも私は伸太さんに引金を引いて欲しくなかった。
伸太さんが雁野さんを狙撃するくらいなら、私は彼をずっと四次元ポケットの中に押し込め続けたいと0.1秒で思い付いたくらいだ。

でも…その想いは徒労に終わった。
たった一人のゲストの出現で、雁野さんは思いとどまり、冷静さを取り戻してくれた。

「出来杉と剛田の活躍は知ってるが、雁野、君も立派になったじゃないか私は鼻が高いよ…。」
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「先生!」

「昨夜遅くに、骨川コンチェルンの関係者に無理矢理飛行機に乗せられたよ。
世紀の大発明を静香くんが成し遂げ、その材料のイモをあの野比くんが育てたなどと…。
なんと立派な教え子達だろうか!
で、野比君は何処に居る?」

「ほら、伸太さん、ポケットから出て!ライフル銃はこの四次元ポケットの中に棄ててね♪」終(エピローグに続く)