ブルーキャット30 早朝の蒼い猫編2 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「もう帰るの?もっとゆっくりして行けばいいのに?」

「ごめんなさい、まる代さん。
今日はこの後、日本大使館に呼ばれてるの。」


日米印の三国会談が正式に決まり、晩餐会に私が作った「ほんやくコンニャク・プロトタイプ」が出されることもほぼ確定した。
大変なのはこれからだ。
外国の首脳に提供するなら外務省は勿論、食品としては厚生労働省、斬新な発明なら文部科学省に特許庁と、たかだか蒟蒻一枚を巡って、私は面談を受けることになった。
これはそもそも、三国会談をまとめたのが、防衛大臣の出来杉さんだからということで、当の外務省が面目丸潰れということでカンカンらしい。
しかも晩餐会まで取り仕切られとしては…ということで、私は有能過ぎる出来杉さんのやっかみの風避けに今から大使館に向かいます…。
面談というか取り調べだわ…。

「なぁ、シズカ。大使館に行くなら、俺に遅らせてくれ。俺も自分の国の大使館に用があるんだ。」
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エムポパさんが運転する黒い車は、伸太さんとエムポパさんが強盗を追い払った時の戦利品。ホントに頂戴しちゃったんだ…。

「エムポパさんはどうして大使館に?」

「…故郷の幼なじみをこっちに呼ぼうと決めたんだ。」

「幼なじみって女性の方?」

「あぁ、家族になるつもりさ!ゾウタクシーと農園でやっと安定してきたからな。
次のステップの目処が立ったのさ。」

「ステップ?違うお仕事を始めるの?」

「…シズカ、この声を君は知ってるんだろ?」

と、エムポパさんがカーステレオのボタンを押すと、懐かしいまるで風邪を引いたような太い声が…。

「そこがきみの悪いところだ!
何かやってみて、うまく行かないと直ぐに嫌になってしまう。
そんなことではいつまでたっても何も出来ないよ。」

間違いなく、ドラちゃんが伸太さんを叱ってる声だった。

「大切な親友を失ったが、声だけが残ってると伸太が言ってたよ。自警団をしながら触れ合った子供達に、為になるメッセージだけを聞かせてあげてるのさ。
勿論、穢れた俺達が何をやっても偽善だろうがな…。」

「そんな、偽善だなんて…。」

「俺は『何でも屋』を開くつもりだ。伸太と一緒にやるつもりだがな。
あいつも子供の頃、『何でも引き受け会社』って大人の真似事をして、親友に説教されたと言ってたよ。
でも儲けなんかより、憧れの女の子が僕の秘書やってくれたらそれだけで十分だったと。シズカのことだろ?」