というのが私の考えだよ、Dr.シズカ。
食べ物とお金は銃で奪えても、『食べた物』と『学んだこと』を奪うことは出来ないというのが私の持論だ。だから私は今ここで、君とこうやって研究している。」
「はい。私もそう思います。」
「それよりも…結果が出たようだ。君がドゥル芋に水酸化カルシウムを混ぜて作った…確か日本の伝統的な…。」
「はい、蒟蒻(こんにゃく)です。祖母から教わった作り方ですので、日本国内の一般的な作り方とは…。」
「ドゥル芋の芋煮よりも、こんにゃくにした方が、遥かに数値が伸びてる!
相手の言葉を理解するだけでなく、自分が知らないはずの原語を能動的に伝達出来る様になりはじめている!」
****
そう、私は今の時代でブルーキャットの秘密道具「ほんやくコンニャク」

を作るつもりだ。
そして、世界の首脳達が一堂に集まった席、晩餐会かな?で食べてもらう。
『お互いが母国語同士で』語り合ったら、どれだけ距離が縮まるだろうか?
勿論、直ぐに戦争が終わるわけじゃないけど…。
これを実現するには、防衛副大臣の武さんが防衛大臣の出来杉さんにどれだけ詰め寄れるか、そして周音夫さんがどれだけ世界中の政財界に圧力をかけられるかだわ。
でも問題は…伸太さんよ…『21世紀版ほんやくコンニャクもどき』の産みの親は貴方でもあるのよ…。
彼が…私達の望む理想の未来よりも、銃弾で解決しない保証がないのが正直不安なの…。
研究材料にと言って、農園から度々芋を貰いに行くついでに伸太さんの様子を遠目に見てるだけの自分に腹が立つわ。
何がしたいんだろう…私…。
****
「もしもし、周音夫さん?もうすぐ帰国するって言って、あれから3ヶ月も居座っちゃってホントにごめんなさい!
あと少しで問題がクリア出来るの!え?先月も同じ台詞だったって!?」
「うん、いやいいんだよ。
経費は一切気にしないで。
こっちにも吉報があるんだ。
河井くん!」
「お疲れさまです。
貴女の指示で『源静香さんと行き違いで、野比伸太さんに狙撃依頼をして断られた者』の調査結果が出たことを報告致します。

茂手最哲夫(もてもてお)。例の剛田さんの妹さんと同人誌を出した仲です。」