ブルーキャット 第13話 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「じゃあ、気をつけてね。…としか言えないけど…。
インドのニューデリー行きで、一番安全な便を選んだから。
これくらいしか出来なくてごめん。
本当はチャーター機で送迎したいんだけど…。」

「十分よ、骨川さん。
戦時下で英才さんの監視も厳しいから…。
もしも『彼』が静かな生活をしてるとしたら、私のせいで平穏を乱したくないわ…。
骨川さん、剛田兄妹を宜しくね。
武さんが潜水艦の任務を解かれた途端に、英才さんが表に出なくなったのだけ気がかりなの。」

「わかってるよ。二人は僕に任せて。
源(みなもと)さんは、その目で現地で確かめてきなよ。」
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「…当機は成田空港発、ニューデリー行き…。」

アナウンスが機内の平常運転を告げる。
戦時下で最も警戒するのはテロだ。
20世紀こそ、資源争奪戦争であり、大量殺戮戦争だったが、第三次世界大戦は、「経済戦争」であり「情報戦争」であり「特許権争奪戦争」そしてそれらに共通するのは「イライラ神経戦争」だった。無理矢理連れてこられた兵隊と兵隊がヨーイドンで戦うなんてのは非常に非効率であり、そんなことをするならテロハッカーがライフラインを麻痺させたり、資本家が資本と労働者を撤収させる方が遥かに痛手だからだ。
だからこそ、直接的な戦死者こそ少数だが、緊張状態による警戒警備で兵隊さんは疲弊し、国民とメディアと政府は偽情報に翻弄されるのだった。
だからこそ私みたいな女性が、単身で観光の名目で飛行機に乗れている。
勿論、目的地のインドは近代戦争の様相を象徴するかのような国だった。
IT先進国であり、広大な国土と人口は豊かな国の代表であったが、格差社会による若年貧困層は貧しい国の代表でもあった…。
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秘密道具「たずね人ステッキ」は観光地のジャイプールから少し離れた郊外を示した。
ここからの2キロ圏内以降は自分の足で調べるしかない。第一、行き違いで彼が移動してる可能性もある。
まずは現地での聞き込みよ…。「日本人」「眼鏡」「ゾウの叔父さん」「あやとり」「射撃」そして15年前の彼の写真。頼りない手がかりだけど…。
と、思った時、拙い英語で客引きする女性の声を聞いた。

『観光名物ゾウタクシーは如何ですか~?』

ゾウ?やったわ!同業者とかの繋がりで彼を知ってるかも!
駆け寄った私を見るなり、ガイドの彼女の方から日本語で…。

「貴女日本人?私もよ。貴女、鍵と錠前のペンダント持ってますか?」