私はインドへ行く。
肌身離さず首飾りにしていた鍵と錠前を開ければ、自室の空間が湾曲する。光さえも吸い込もうとする漆黒の空間に右手を伸ばせば、「それ」はそこにあった。
これこそ私に託されたブルーキャットの封印の一つ
「四次元ポケット」だ。
与党好戦派の出来杉英才さんが手に入れようと画策していた「ブルーキャットの未来テクノロジー」とは具体的にはこれそのものだ。
ドラちゃんの心も身体もエネルギーもない今現在だけど、未来の秘密道具を私だけが使える…。電話の子機のように、ドラちゃん自身から離れたこのポケットのエネルギーには限界がある。
私の計算が正しければ、この状態で使える回数は僅かに三回。
どの道具を出すかって?
「独裁スイッチ」で邪魔者を全て消す?
「もしもボックス」で戦うことさえ知らない世界を作る?
ううん、それじゃあ駄目。そんな力を使ってしまったら、今度は22世紀でドラちゃんは生まれてこなくなる。
ドラちゃんが生まれてくる未来という
「これから始まる過去」
を私の手で握り潰しちゃ駄目。
伸太さんの孫の孫のセワシさんが暮らす22世紀を作る為に、私達が礎にならなきゃ…。
使うとしたら何を選ぶか?
それはもう何年も前から決まってたわ。
「たずね人ステッキ」
よ。

倒れた方向に探したい人物が居るという夢のような道具よ。
でも、悲しいけど、このステッキの的中率は70パーセント。
闇雲にステッキを倒しても広大なインドを徘徊するだけだわ…。
だから私はもう何年も前に、このたずね人ステッキの可能性を広げるパソコンソフトを開発した。70%で的中するということは、残り30%の不確定要素を分析すればいい。更に地面に倒せば、ステッキの倒れた場所の位置情報に対しての方角を示すだけだが、パソコンの地図情報をケーブルでステッキと繋ぐ。徒歩基準で方角を示すだけだから誤差が大きく絞れないなら、マップの拡大と縮小を繰り返せば…半径2km圏内に99. 99%の確率で居るわ。
私には不安が一つある。
クリスティーネさんが見せてくれた暗殺写真は、違う方向か近距離で二種類の銃弾で撃たれていた…。

伸太さんは2丁拳銃が得意なのよ…。
続