「…私、その方が彼らしいと思うな…インドでゾウと一緒に暮らす日々…。
私の願望としては植物学者になっててほしいと思ってたけど…。」
「いいや、ブルーキャットが未来から来なかったら、正史では会社を立ち上げてたそうだから、きっとまだ国内に居て、ベンチャー企業で細々とやってんじゃないの?
僕に言ってくれたら、融資の相談に乗るのに。利子は高いけどね♪」
「何言ってんだよ!あいつは情に熱いところがいいんだよ。
きっと病院や施設で人の心を治す仕事をしてるはずだっつーの!」
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私達全員が緊迫した状況のはずなのに、再会した私達の話題は伸太さんの現在と過去で持ちきりだった。
武さんの言う「心理療法士」になってる彼もいいなあと思いながらも、最も治療を必要としてるのは、ブルーキャットを失った彼なんだろうなと思った。
「じゃあ、これからも連絡取ろうぜ。
俺は任務のお呼びがかかるまで暇だから、妹が暴走しないように監視をしとくぜ。」
「ジャイアン、十分に気をつけてね。
ジャイアンが解任されたのと、最近の英才の動きが気になるんだ…。」
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楽しい食事から数日、誰からも連絡がなく私の周囲だけは平穏な様相だった。
武さんと周音夫さんとの再会。
そして公人である出来杉英才さんの豹変ぶり。
それが私に一歩踏み出す後押しとなったのは事実だ。
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「…社長ではなく、私個人に相談とはどういうことでしょうか?」
「一人の女性として、秘書の河井さんと話したかったの。
私ね、二人の話を聞いて、伸太さんを探しに行きたくなったの」
「『ゾウと暮らす東洋人』って情報を頼りにインドまで?雲を掴むような話ですわね?」
「だから、ブルーキャットの『鍵』を使うべきか悩んでるの。私の鍵は『ポケット』よ。
15年間使わずに苦しんできたわ。
四次元ポケットに残されたエネルギーでも、3つくらいまでなら秘密道具を出せる計算なの!
その気になれば私だけ裕福になるのも可能だったわ!辛い葛藤の日々よ…。
『私が独裁者になっちゃ駄目』と言い聞かせてきたけど…もう限界!
でも武さんと周音夫さん、それにドラちゃんとの誓いを裏切りたくないのよ!
ねぇ、河井さん、私ってワガママですか?」
「…社長も…『身体』の鍵を使って、動かなくなったブルーキャットを抱きしめ続け、涙を流していた時もありました。
と、だけ言っておきましょう。勿論、固く口止めされてましたが」続