ブルーキャット 第10話 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「うめぇ! 陸に上がった時のメシは一先ずカレーと決めてたけど、カレー屋のカレーじゃなくて、うどん屋のカレーライスもたまにはいいな。」

久しぶりの再会も、ムードも雰囲気もぶち壊す大食漢ぶりを発揮する武さん。
それが彼らしくて私は安心した。

「ありがとよ、静香ちゃん。
こんな美味ぇ店教えてくれてよ!
潜水艦のメシは直ぐに飽きるんだよ。」

「たまには僕のグループ傘下以外の店で食事をするのも悪くないね。」

「周音夫さんたら、またわざとそんな嫌味な自慢話しなくてもいいのに。激務の社長さんなんて、移動中の車内食と、交渉での会食ばかりなんじゃないの?」

「まぁね。極力、自分の時間を作るようにはしてるんだけど…ジャイアン、そろそろ本題に…。」

横須賀の裏通りにある小さなうどん屋さんは、「秘密の会合」に最適の場だった。
グローバル企業となった「骨川コンツェルンに関係ない店」を探すのはそれなりに苦労するからだ。

「あぁ、そうだな。
まずは俺の妹の無礼については謝る。
レジスタンスの英雄 なんて、外国に行きゃあ、腐るほど噂や伝説が溢れてるぜ。
妹はただ理想を重ねるだけと思いたい。」

「私もそう思うわ。
伸太(のびた)さんはきっと、英才さんが居るような窮屈な日本を飛び出して、海外で動物や植物に触れ合う仕事をしてるはずよ!
いくら昔から射撃が得意だからって、狙撃手だなんて…。」

「…これは別に静香ちゃんを安心させようなんて気はないが…三年くらい前に、一緒に訓練した米兵と話したんだが…。
『同期が眼鏡をかけた東洋人からアヤトリを習った。そいつは、以前はフランス外国人部隊に所属していたそうだ。
狭くて退屈な艦内でアヤトリは、電気を使わない良質な遊びだった』と話してたよ。
そしてその東洋人は、少年のような体格でも、抜群の銃の腕前だったってよ。
だが、傭兵はあくまで夢の軍資金稼ぎと言ってたそうだ。」

「ちょっと武さん、いくら何でも話を盛りすぎてない?伸太さんに限って外国人部隊だなんて…。」

「話を大きくするのは、小学生時代の僕の専売特許だったのにね。
ビジネスの世界ではシンプル、ストレートが一番だよ。」

「それで、その眼鏡のアヤトリを教えてくれた東洋人の夢って?」

「よくわからないけど、インドで親戚の家業を継ぐとかなんとか言ってたかな?」

「確かに、伸太さんにはインド在住の象をこよなく愛する伸郎叔父さんが居たわ。」