※この物語はフィクションです。
作中の名称と、実在の組織、団体とは一切関係ありません。
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「お兄ちゃん?何で電話出来てるの!?原子力潜水艦の任務が終わるのは、まだもっと先でしょう?」
交渉が決裂しようかという席上で、突然鳴ったクリスティーネさんの携帯電話。
その相手はお兄さんの剛田武(ごうだ たけし)さんだった。
私と骨川さん、そして現在行方不明の「 彼」を含めて、私達四人はずっと一緒だった。
ブルーキャットを失い、封印することを選ぶまでは。
剛田さんは自衛隊員になることを選んだ。
それは限りなく、私達の為であり、ブルーキャットの秘密の為でもあった。
ブルーキャットの「未来の科学技術」を世間に知らせない為には、剛田さんが英雄になるしかなかったのだ。
確かにブルーキャットの封印は私達で四等分したが、世間からの注文逸らしを剛田さんだけに負担させたことを、私は今でも後悔している。
私は何度も謝罪したが、剛田さんは繰り返し、
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「お前達の苦しみは俺のモノ、俺の苦しみは俺だけのモノ。
だろ…?
小学生時代の、あの総理の晩餐会がなけりゃあ…って、そりゃバカな俺でもそう思うときはあるさ。
でも、悪いのはテロリストだっつーの!
『燃え盛る炎の中、血塗れの流宗首相を抱えて走った剛田少年』は国家の為に海上自衛隊員に入隊し、マスコミが騒ぎ続けた『小さな巨人伝説』を終わらせるしかないっつーの!
だから…ブルーキャットなんて最初から居なかった…。なぁ、そうだろ?」
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そう、僅か10才の少年達に重傷の人間を助けない理由はなかった。
私達は当たり前のようにブルーキャットに頼み、そのポケットから『お医者さんカバン』を出してもらい、降り注ぐ銃弾を『ヒラリマント』で避けたわ…。
でもその辻褄合わせに聡明なブルーキャットは自分を封印してくれと私達四人に懇願したわ。
あのテロ事件で本来は亡くなるべきだった流宗総理大臣を助けてしまった。
それによって歴史は変わり、ブルーキャットが帰るべき未来は改変されてしまった。
私達がこの世界戦争を止め、平和な未来の希望が見えた時、そう、その時になって漸く四人それぞれの鍵で封印を解けば…ドラちゃんを未来に帰せるはず…。
可能性を信じてるわ…。だから私はこの15年間で、一度も自分の鍵で『ポケット』を使わなかったわ。骨川さんは『身体』。 剛田さんは『動力源』。そして「彼」は『記憶』の鍵を。続