「一号生の二時限目は、私、冴木マツリが担当の『政治』です。
とは言っても、私は人間界で教師でも学者でもなかった。
地方議員に過ぎない私は、五人の教官の中で最も誰かに何かを教えるには遠い存在だと思っている。
だが、萌慎艶戯塾の皆が人間社会で苦労しない為に、私に出来る全ての事を君達に伝えるつもりだ。」
教卓に立つマツリが言葉を区切った瞬間に、教室の内外から「キャー!」という黄色い歓声が上がる。
そう、教室の外からもだ。
その声に気付いたマツリは窓から覗き見る塾生に向かって…。
「二号生は自分の教室に帰れ!
君達は今、綿貫教官の『法律』の授業だ!」
予想以上に厳しい口調で追い返そうとするマツリに数名の二号生達は面食らったが、それ位では引き下がらない彼女達だった。
「え~、法律も政治も同じ様なモンじゃないですか~。
だったら可愛いマツリちゃん見てた方が勉強になりま~す。」
「…政治学と法学が同じかは学ぶ前に決めることではない!
そして君達が自由と権利を主張して正規の授業を抜けたと言うなら、自由と権利は私にも、そしてそれはここの一号生全員も持ち合わせているということだ。
君達、窓から覗く先輩方を『ウザい』と思うなら挙手しろ。
他人の顔色に構うことない。
己の良心に従うのだ。
『誰かが挙げてくれる』では何も変わらない。何故ならば、相手も同じことを考えるからだ。」
左右に首を回し、一号生一人一人の目を見るマツリ。
途端におそるおそる手を挙げる塾生達。
「先輩!はっきり言って邪魔です。
それに冴木教官に憧れてるなら、そんな態度は逆効果だと思います。
それでも邪魔するなら、一号生筆頭の私がこの教室を守ります!」
「筆頭の樹里亜さんの言葉は筆頭代理の私の言葉!
先輩方、この鳥羽かごめと一太刀手合わせ願いませんか!?」
「い、一号生の分際で…。」
「君達二号生は午後の選択授業で私の授業を選べれる!
その時を待て!」
「は、はい…失礼しました…。」
「君達、萌慎艶戯塾四訓の二を言ってから戻れ!
は、はい…!
『塾生は社会の一員として慎ましい態度を心がけるべし!』
」
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「時間を費やして申し訳ない。
だが、今のが民主主義の基本、『多数決』だ。
君達は親や村長に言いなりの生活を送ってきたかもしれないが人間社会は違う。
政治とは『父が正しく治める』と書く。リーダーに求められるのは重要な決断することだ。
続