妖!萌慎艶戯塾(あやかし ほうしんえんぎじゅく)序章2 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「私だ。直ぐ来い。」

一日に何度もこの様な電話を受けることにゆかりも慣れていた。
議員秘書兼運転手とはそういうものだと、ため息の後は割り切ったつもりだが、先生様のプライベートで呼びつけられ、しかも予定が遅くなるならまだしも、早まるのは勘弁してほしい、切に思う古瀧(ふるたき)ゆかりだった。

「…あの、先生…。約束の時間よりまだ二時間も早く…。それにお電話の時は、お乗せするのはお一人様だけだと…。」

会場を後にし、ハンドルを握るゆかりは突然の『同乗者』に困惑していた。

「ごめんね~、私達まで相乗りさせてもらって~。この一反もめんちゃんがフランケン男に絡まれてたからさ…。
逃げ出した時にタイミング良く貴女の車が来たからさ…。」

茶色い毛皮の着ぐるみの女は、男に飛び蹴りをした武勇伝を自慢気に語っていたが、助けられた側の女は有り難迷惑な様子だった。

「い、いくら私を助ける為とはいえ、貴女のしたことは立派な傷害です!それに私の許諾なく車に押し込むことは誘拐です!
これじゃ『リアル狼女』じゃないですか。」

「助けてもらって弁護士みたいなこと言わないの!
ごめんね、あたし女子校の体育教師だから、ついつい先に手が…。」

ハンドルを握るゆかりはバックミラー越しに、毛皮の着ぐるみが狼女のコスプレだと漸く納得した。
そして白い着物の女はお岩さんか何かの幽霊女と思ったが、話を聞いて一反もめんと聞いて苦笑するしかなかった。
これなら助手席に座る女性の大荷物に『ぬりかべ』のコスプレ衣装が押し込まれてるのも納得だった。

「…あの…先生、それでどちらに向かいましょう?四名様をお屋敷にお通ししましょうか?」

ゆかりの質問に、冴木マツリはヴァンパイアのマントをたたみながら答えた。

「お父様が居るなら屋敷は駄目だ。
そうだな、この辺りに遅くまでやってる喫茶店はないか?
せっかく出会えたんだ。
せめてゆっくりお茶しながら自己紹介くらいしたいな。」

「そうですね、私も妖怪談義を楽しみにして参加したんですから、ちょっとお喋りしたいです。
運転手さんもどうですか?」

助手席の堅城治美(けんじょうはるみ)は優しい気遣いを忘れてなかった。
しかし、五人の女子は肝心のカフェに心当たりがなく暫く迷走してると…。

「ねぇ、今どこ走ってるの?」

「はい、先ほど四谷に入りました。」

「…。」

「…。」

『喫茶ロビンフッドなんて噂よね?』続