真喜志先輩を敬遠したということは、相手バッテリーは僕のことを「こいつなら打ち取れる」と思ったからだ。
まだ最初の打席で、僕だけでなく、真喜志先輩もどんなバッティングをするか知らないクセに…!
腹立たしさをバットに込めたいけど、秋成の言う通り、頭はクールに…。
怒りは判断を鈍らせる、しっかり球を見極めないと…。
バッターボックスに向かおうとすると、ネクストバッターの須永先輩が…。
「金城、鍵はお前や俺みたいな左バッターだ!
バットの芯で打ち返した加賀谷も向井も左打者だ。
玉野だけは右でヒットを打ってるが…。」
「須永先輩、やっぱり都倉さんのツーシームは左の方が…。」
「あぁ、見極めやすいし、ツーシームが俺達の外角低めに決まってもそれほど脅威じゃない。
右打者なら内角低めに食い込んで打ちにくいだろうがな。
思い切っていけ、金城!
俺をセカンドからセンターに追いやったのは、守備力だけじゃないんだろう?」
「勿論です!」
「よし行ってこい!」
失うものはない、駄目で当然!
「ストライク!」
外角高めのストレートに振り遅れで1ストライク。
速い…!
ウチの真山先輩より明らかに速い!
練習でも本気の真山先輩のストレートを打てた試しがないのに…。
くそう…。今の高めはチャンスだった。
変化球が高めに入ると、タイミングさえ合えば長打になる。
だから相手は高めに投げる時は直球しかないはずだ。
配球の基本は
「対角線」
外角高めに投げたら、次は内角低め。
これが右打者なら直球かツーシームか悩む所だけど…。
左打者の内角低めにツーシームを投げたら、変化する分、真ん中に入る。
つまりそれは棒球になるから要求はしない。
と、なると…内角に来るのは絶対にストレート…ここだ!
「カキン!」
一球目と同じタイミングの速球が本当にインローに来た!
思い切り振り抜いた先は…。
「ファール!」
一塁線をライナーで破るかと思ったが惜しくもファール!
いける!僕でも出来るぞ。
バットを一握り短く持ち直す。速球に振り遅れない駄目だ。
けど、それは相手へのパフォーマンス。
外が届かないだろうと、ツーシームで更に遠く投げるから…。
「ボール」
やっぱり!左打者にはツーシームで勝負にこない。
四球目。
「ズバッ!」
内角でも伸びのあるインハイのボール球に三振。
しまった、左右の揺さぶりばかり気にして高低差にやられた悔しい!