僕たちに許された二重殺18 試合編4 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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意表をつく山大付属のスクイズ。
一死一三塁で四番にさせるなんて、堅実な野球だ。
これが強豪ゆえの慎重さと確実さだろうか?
けど…僕は…。

「ツーアウト!ツーアウト!!
相手が勝手にアウトくれてんだ!
貰っとけ貰っとけ~!!」

ファーストのベースカバーという比較的簡単なプレイでゲームに入れた僕は身体も気持ちも軽くなった。
ショートの秋成以外はみんな先輩だから気後れしそうだけど、内野全体を見渡して声かけするのは、セカンドの重要な役目だ。
取りあえずあと、一人。まずはここを乗り切るんだ…。

「四番が何ビビっとんじゃ~!」

審判から注意されかねない、ファースト加賀谷先輩の野次。
もう味方への声かけじゃないし…。

「慎、自分を鼓舞することは大事だが、頭は常にクールにしてろ。
ツーアウトでも、まだこいつが居て相手は五番だ…。」

三塁ランナーはホームインしたが、一塁ランナーは二塁に進んでいる。
秋成はグラブで指差し、相手走者に「こいつ」と言った!

絶対に聞こえるように言ったよ!

「一年坊主が…。」

うわぁ、やっぱり聞いてた…怖いなぁ。
真山先輩、なるべく三振取ってください。
秋成か僕の所にボールが来ませんように…。
と、願ってたら…。

「ウエストだー!」
真山先輩の初球は、外角高めにわざと外したボール。
キャッチャーの真喜志先輩は立ち上がり…。

「セカン!」

矢の様な二塁送球に、ショートの秋成がベース上で待ち構えている。

「ヤバい、田中!バックだ!」

虚を衝かれたランナーの田中さんは戻るタイミングが遅れ…。

「アウトー!チェンジ!」

リードの大きさを見逃さなかった、キャッチャー真喜志先輩の好プレーにナインとベンチ、そして観客席も大歓喜だ!
凄い、あの山大付属をまんまとハメてやった。
でも…秋成の「挑発」にランナーの田中さんが苛立ったからに違いない…。

まさかそれを見越して?
真意を聞き出したかったが、打順が秋成からだった。
慌ただしくヘルメットを被り、打席に入ろうとする直前に…。

「いつでも逆転出来ると、思わせる作戦か…。」

と呟いた。確かに一点は取られたけど…。

「ボール」

一度もバットを振らずにスリーボールワンストライクに持ち込んだ。
相手は振らない秋成に野次を飛ばすが、秋成の鉄仮面は変わらない。
そして、

「カキーン!」

若干真ん中よりのツーシームを打ち、センター前ヒット。続