僕たちに許された二重殺 17 試合編3 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
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一回の裏、山朋堂大学付属高校の攻撃。

マウンドの真山先輩は強豪校ということを全く気にせず、淡々と投球練習をしていた。

そして…。

「おぉ~」と、山大付属の一塁側ベンチから驚きの声が上がる。
真山先輩の一球目が、相手のトップバッターの外角低めにズバッと決まったからだ。
確かに都倉さんほど早くはない。
けど、ここまでの速球を投げるピッチャーはなかなか居ないはずだ。
そして…。

「ストラックバッターアウト!!」

ふわっと力を抜いたようにタイミングを外すチェンジアップ!
真山先輩の決め球が見事に決まり、バッターは豪快に空振りした!

やった!流石真山先輩だ。
先輩の直球とチェンジアップを混ぜた緩急自在のピッチングは、山大付属でも直ぐには攻略は難しいはずだ!

「いいぞー!バッター打ってこいやー!」

一塁手の加賀谷先輩と、三塁手の井坂先輩から声が上がる。
気持ちで呑まれたら駄目だ。
僕たちは対等に戦うんだから…。

でも…。

「ボールフォア!テイクワンベース。」

次の二番打者は、前の打者の三振を反省してか、じっくりボールを見極めての四球出塁。
惜しいボールもあったが主審は取ってくれなかった。

ランナーを出して相手の主軸を迎えることになった。
捕手の真喜志先輩の指示で、僕と秋成はやや前よりに、しかも二人とも二塁ベースに近い場所にポジションを取った。
併殺狙い、いわゆる「ダブルプレイシフト」だ。
相手の三番を、僕と秋成で二重殺に打ち取ってチェンジにしたら、どれだけ盛り上がるだろう…と、思ってたが…。

「高い!」

甘くストライクゾーンに入ってしまったチェンジアップを強振されてしまった!チェンジアップはタイミングが合うと軽く遠くに飛ばされてしまう!

無慈悲に僕の頭を越えた打球は長打コースか?と、思われたが、ライトの川中先輩が巧く回り込み、矢のような送球で走者の本塁突入をストップさせる。
一死一三塁で相手の四番を迎えることになった。

「タイム」

マウンドに集まる僕ら。
真山先輩は「悪ぃ、悪ぃ」と軽く流す。
これが投手に大事なハートの強さかぁ…。

外野フライでも一点。
二重殺が崩れても一点。
二塁を守る僕の緊張はピークだ。
一点は仕方ないかもしれない。
確実に一個ずつアウトを積み重ねないと…。
「しまった!
加賀谷、一塁!」

相手の四番が初球にスクイズなんて!
僕は一塁ベースカバーに入りアウトにした。続