再掲載:七尺と四分の一。キルケゴールの文芸評論 2(20160420) | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

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ホルベルの喜劇「イタカのユリシーズ」という舞台で

「七尺と四分の一の偉丈夫ホロフェネス将軍」

というセリフがある。
ここでの矛盾は実のところ最後の付け足しにある。
七尺という身長は絵空事である。
だがまったくの絵空事なら四分の一といった小刻みな単位を持ち出さないのが普通である。
この現実性を匂わせる付け足しなのだ。
七尺と聞いて笑いだす人は、笑いの的がはずれている。
けれども七尺と四分の一と聞いて笑う人なら、何がおかしいのかをちゃんと心得て笑うのである。
(キルケゴール全集9巻より)
****

はい、先ず私から注釈を。

このキルケゴールの言葉は、19世紀に述べられたということ。

そして文中のホロフェネス将軍とは、旧約聖書の外伝に登場するバビロンの将軍だそうです。

私が上記のキルケゴールの言葉から感じたのは

「フィクションにおけるリアリティの演出」

です。
21世紀に生きる私達だからこそ、ファンタジーな映画やアニメを当たり前の様に視聴してますが、舞台こそが最も視覚に訴える創作だった時代に、キルケゴールの言葉はファンタジーな娯楽の到来を予言してたのでは?
と思います。

はい、これが神話なら、

「将軍は大男」

で終わってます。

昔話や口頭伝承なら

「七尺はゆうにある~」

と、誇張され、尾ひれが付く程度です。

しかし、「七尺と四分の一」の、「四分の一」が付くだけで、聞いた側は

「いや、お前、自分で見たんかい!」

と、突っ込みを入れずにはいられない所に、笑いを誘う演出が仕掛けられてるということです。

これが現代のSFならどうでしょう。

ガンダムにおける専門用語の数々、

「ミノフスキー粒子」「モビルスーツ」「ニュータイプ」なんて言葉も、架空の世界に単位を設定することで、作品のみの世界観とその「法則」に真実味をもたらすのです。

ゲームのドラクエの魔法体系なんかもそうですね。
メラ→メラミ→メラゾーマと呪文が強大化したりします。
なお、キルケゴールの生誕から約70後に「SFの父」HGウェルズが生まれます。


なお、私は翻訳本を読んでますので七尺は2メートル12センチ(一尺=約30.3センチ)ですが、おそらく原文は7フィート(1フィート33センチ)だと2メートル31センチになりますね。
欧米の四分の一とかの文化は、金の塊そのものを、「割って」使用して名残で10進法はアラビア文化です。