勲章と指環 5 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

ダイヤモンド。別名金剛石。
それは地上で最も硬い物質と言われ、その希少さと美しさも含め、古来より
「堅き忠誠の証」として王に使える騎士の象徴とされてきた。
しかし、ダイヤモンドは反面、熱に弱く、実質的な武具や装備品に使われることはなかった。

最も硬く、燃え尽きれば欠片も残らないその様は、やがて騎士の最期になぞらえるようになり、スールシャール王国に限らず、多くの国々でダイヤモンドは
「殉死した騎士に贈られる勲章にのみ使われる宝石」
とされた。
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「ロイ、この意味がわかるか?
お前に私の悔しさがわかるか?」

「殿下がお前にこれを…?」

ロイは本当に困惑した表情だった。
内務大臣でありながら、事情を本当に知らなかったようだ。
申し訳なさそうに唇を噛んだ表情は、少年の頃に私にチャンバラや早馬で負けた時と何ら変わっていなかった。
私は安堵してしまった。
ロイがハイネ殿下に口添えして私に求婚したのかと少しでも疑った自分を恥じた。
いいんだ、ロイ。
私にはお前を許す準備がある。
殿下からの求婚に対して、お前がその顔をしてくれただけで十分だ…。

「…すまない…リディア…。
まさかお前だったなんて…。
しかもダイヤモンドの婚約指環とは…。
俺は殿下から相談を受けた時、
『リディアを喜ばせたいなら、騎士として最大限の名誉を与えることです。』
と助言したことはある!
だがまさかそれが今回の件と…。よりによってリディアだとは…。」

「ロイ、貴様、まだ何か隠してるな…?
私にも言えないことなのだな?
ジオン兄さんの差し金か?」

「……。」

「何故、答えない!私にミネルバ王女から殿下を奪わせ、両国の火種にする気か?
ジオン兄さんはお前と謀反を画策してるのか?
どれほど、私を馬鹿にする気だ!」

「…ダイヤモンドが気に入らないなら、直ぐにエメラルドやサファイアを用意する。
俺の助言が悪かった。
すまない…。」

「…それだけ…か…?
私が指環だけに腹を立ててると思ってるのか!
ロイの馬鹿ー!!」
無造作にロイの腕を掴み怒りに任せた背負い投げをお見舞いする。
大の字に倒れたロイの上に馬乗りになり、腰から鞘ごと外した剣を喉に突き付ける。

「…もういい…。
ここでお前を刺せば、内務大臣殺しの容疑で私は収監だ。
殿下も囚人を妃にするまい。
さぁ、人を呼べ!」

「…いや、この状況、『お取り込み中、失礼しました!』てなるぜ…。」