いっそ、大洪水を起こして、全ての人間を流してしまおうか?
だが、精魂込めた自分の作品を消し去るのは惜しい…。
神様は唯一信頼できるノアに計画を持ちかけ…。」
「リディア団長、旧世界の人間はどうしてノアの言葉を信じなかったのですか?」
「神様の言葉を聞いたのがノアだけだったからでしょう。
エマ、貴女も私が『明日に大洪水が来る』と言ってもにわかに信じないでしょう?」
「確かに見ず知らずの人間がノアに非協力的になるのはわかります。
でも、団長の言うことは信じたいです。」
「私達は」
「花乙女騎士団」
「結束は」
『固い!』
講義を受ける騎士は全員が女性だった。
スールシャール王国随一の武勇を誇るリディア=ロンド団長に勝る男は皆無だった。
本来的なら貴婦人の教養の延長として、剣術や旧世界の経典を教えることに終始したかったリディアだったが、王国の軍事を一任されたトレビル将軍が病に伏したことから状況は変わった。
「おい、リディア、エマ。
二人とも急用だ!」
「ロイ!」
「内務卿…。」
内務大臣が単独で教室に現れても混乱は起きない。
リディア=ロンド騎士団長も、ハイネ王子付きのメイド、エマ=クレイトンも皆、幼なじみだからだ。
「ロイ、ここへ来る時は事前に連絡を…。」
「将軍が危篤だ!
行くぞ。」
「はっ、はい…。」
****
「おお、ロイ、エマ、リディア来たか…。これで思い残すことはない。」
「鬼将軍と恐れられた親父殿が何を弱気な!」
「ロイ、若い頃に東の谷で見つけた『世界の秘密を握る鍵』じゃ。民衆は勿論、ハイネ王子でさえ、この現実は直視出来ぬ。お前達に秘密を授けて逝くワシを許してくれ…。」
****
「これは…!」
「そんな!一体どうやって?」
「そう、これを神の奇蹟でなくて何が奇蹟か!
これが大破壊から生き延びた『方舟』そのものに違いない。」
「何故、このような形で…。」
「わからぬ。ただ、『来るべき日』の時の為に小さく力を封印していると考えるのが自然であろう。世に知れ渡れば我こそは、と凄惨な奪い合いなるのは必定。」
「わかりました。必ず死守します。」
****
これ

を始めて見た遥か未来の人間は伝説のノアの方舟が神の力で小さくされたと思いました。
終