オドラサレ 29 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

(どうして僕は人間じゃないんだ?)

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その日の夕方
ダンス教室

「はい、ファイブシックス、セブン、エイト♪目線を下げない!」

代役を頼まれた臨時の先生に、生徒達は目を輝かせていた。

厳しい指導で時には生徒を泣かす大瀬良よりも、明るい笑顔で楽しく指導する中津川久美子の方が、生徒の小夜子達は安心していた。

目を輝かせているのは生徒ばかりではない。
普段はスポーツジムのインストラクターとして人気者の久美子である。
踊る姿を一目見ようと、会員のオヤジ達がガラス越しにへばり付いてる姿は何とも醜悪だなぁと、端で冷めた視線を投げる奈々子、瞳、真利子の三人と、オウムの姿の明日香だった。
だが、久美子を見守るのはオヤジばかりではなかった。
私服警官である。
警察は当然、大瀬良のアパートや実家だけでなく、職場であるここも張っていた。
勿論、殺人未遂の容疑をかけられ出勤するはずもなく、連絡も無いままレッスン開始の時刻となったので、久美子は警察の警戒警護の下、代役を買ってでたのであった。

「お疲れさま、久美子。
かっこ良かったよ。」

「うん…。まさかこんなことになるなんて…。
私が大瀬良先生を邪見に断らなかったら…。」

「何言ってんのよ久美子!
あんたが断らなかったら、あんたがホステスの代わりになってたんだからね!」

「う~ん、信じ難いけど、彼が『初物』と知ってれば私もやぶさかでは…。」

「こらー!
こっちはみんな夜中まで大変だったんだからね!」

「わかってるわよ奈々子!
北御門さんが『絶対にレッスンをお休みにしないで!』って頼むから…。」

「ごめんね、タロット占いで『戦車』の正位置が出たの。暗示は『前進』『勝利』よ。相手に弱みを見せちゃ駄目。」

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「小夜子、お疲れ。
しかし、物々しい警備だな。
人間の警官がいくら集まっても仕方ねぇだろ?
お前には俺さえ居たら…。」

「倫太郎…。気持ちは嬉しいが、今のお前はただのビルの警備員だ。
警官の言う事は聞けよ!
でも…妖精スプリガンのお前を…誰よりも信じてる…。」

「小夜子。お前は俺が守る」

「倫太郎…。」


「ウソ…?小夜子ちゃん、私達親友じゃなかったの?
何でそんな年の離れたおじさんと仲良くするの?キモいよ…?」

「陽菜!違う、私と倫太郎は…。」

「うわぁ~ん、小夜子ちゃん嫌い!」

(見つけた。清らかな乙女の肉体…今度こそ人間に…。)