落合奈々子は人間としての試練を迎えていた。
端から見たらファミレスに集まった五人の女子会に見えるだろうか?
だが、安藤真利子、鳳明日香、段田莉緒。ソロモンの悪魔が三人も揃っているのだ。
例外は茶谷小夜子だが、正体は小人妖精ブラウニーであり、人間界への馴染みは薄い方だった。
(北御門さん、何でここに居ないのよ~?助けて!)
こういう時こそ、職場の上司であり、女性としての先輩である北御門瞳の助言が欲しかった。
目を輝かせて自分の答えを待つ四人の女性を前に、奈々子は人間界の「業」を自分一人に背負わされた気分だった。
勿論、人間でも知らない者は多数居る。
だが不幸にも落合奈々子はその詳細を知っていた。
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覚悟を決めた奈々子。
質問を切り出した段田莉緒に対して…。
「莉緒ちゃん…。
ごめんなさい、一応他人の目があるファミレスだから…見た目小学生の貴女に話し辛いの。
確か変身が得意なんでしょ?
お手洗いで大人に変身して来てくれる?」
「うん、いいよ…。」
「小夜子ちゃんも小人妖精になって、明日香さんの鳥かごに入ってくれない?」
「わかった…。」
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トイレから戻った段田莉緒は見違えるほどの大人女性になって戻ってきた。
「ごめんなさい、大人女性の姿って疲れるんです。
なるべく早く…。」
「わかったわ、あのね、『35歳を過ぎたら妖精になる』って大瀬良さんから莉緒ちゃんが聞いた話は大事な部分が抜けてるわ。
ねぇ、人間界が長い真利子さんならわかる?男性に限定したDとTって?」
「DとTって何ですか?」
(やっぱ無理か…。)
すぅーっと深呼吸した奈々子。
遂に…。
「それは都市伝説ってやつで、『35歳にもなって女性経験がない男は妖精になる』って話よ!」
「女性経験って?ダンス教室は女子ばかりですよ?」
はっと気付いた真利子が切り出し…。
「似たようなこと、過去にお付き合いしてた天使の男性から聞いたことあります。30過ぎて経験ない男は魔法使いになるって」
「あっ、らい夢はそれも言ってました!だから俺は錬金術が『あの方』のおかげで使える様になったんだって」
「……。」
「……。」
小夜子が場の沈黙を破り…。
「ま、まさか大瀬良はそのDTってやつで、自分が妖精だから、35の誕生日までにえっちしたら人間になれて、出来ないと妖精のままだと信じてるとか?」
『馬鹿ですか?(-_-;)』続