「ねぇ、陽菜さん。良かったら私と…。」
「ごめんね莉緒ちゃん。
私、ペアは小夜子ちゃんと組むから。」
「悪ぃな、段田。
お前がどんだけダンスの経験と経歴があって、どんだけ親が金持ちか知らねぇけど、『教えてあげるザマス』って態度で私の大切な親友の陽菜を泣かすことは許さないからな。」
「な、何よ、その言い方!
ふん、アドバイスしただけで、親切心を裏切る子なんてこっちから願い下げよ!
大瀬良先生、すみません。
一人余りますので、私と組んでください。」
「はい、段田さん。宜しくお願いします。」
まずはこれで第一段階クリアだ。
孤立してた陽菜を私は守ることが出来た。
涙を流す生徒が出なければ、犯人もやり方を変えるしかないだろう。
カールクリラノースさんが「花いちもんめ」を私にチャージしてくれたおかげで、私はこのダンス教室に渦巻く子供達の(私も人間としては子供だが)格付け及びピラミッド社会に気付くことが出来た。
今日のレッスンは何事もなく終わり、生徒が他の生徒から罵られることも、大瀬良先生から晒し上げされるほどの行き過ぎた指導もなかった。
時折見える大瀬良先生の左頬の平手打ちの痕は、生徒達からも小さな笑いを買い、マセた女子小学生のグループはレッスン終了後の更衣室で
「先生誰にフラれたんだろうね~?」
「最近急に服やアクセサリーが派手になったけど直ぐにモテないよね。」
等と言う会話で盛り上がっていた。
この会話の内容を是非とも文学の悪魔様に聞かせたいものだ。
人間の小学生より、マリリンの方がよっぽど純粋で可愛いのになぁ。
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「小夜子ちゃん、今日はホントにありがとう。
いつも上から目線の莉緒ちゃんにガツンと言ってくれて嬉しかったよ。
凄くカッコイイな…って。
ねぇ、嫌じゃなかったら、これからも私と組んでよ…。」
「あぁ、私も陽菜と組みたいよ。」
「うん、ありがとう。じゃあ、お母さんが待ってるから、バイバイ。」
陽菜と別れを告げ、マリリンが待ってる所に向かおうとした。
すると角を曲がる手前で、不機嫌な顔で帰ろうとする段田莉緒が、大瀬良らい夢先生と会話してるのを見つけた。
「おいおい、莉緒。
しっかりやれよ。」
「君に命令される理由はない!
作戦会議よ。『夜景の見えるホテルのレストラン』に私も連れて行きなさいよ♪」
うわぁ、先生たら女子小学生相手に何やってんだよ…。マリリンに報告だな…。
続