「お子様で悪かったな!これでもスプリガンのオメーより、100年は長生きしてんだよ!
いつか大人の女に変身出来るまで、気軽に待ってろよ!」
「俺は小夜子が手の平サイズの妖精ブラウニーでも気にしねぇよ。」
「バカ!それじゃあ…ううん、なんでもない…。しっかり見張ってろよ。変な奴更衣室に入れんなよ。」
扉越しの倫太郎との会話。
あいつとは便利屋として仕事を協力したり、頼まれたりの腐れ縁だけど、顔を合わす度に反発するな…。
ドア越しで顔が見えない時にだけ素直になれるなんて…。
これじゃホントに見た目通りの小学生のじゃねぇか。
「職人妖精ブラウニーは仕事に私情を持ち込むな!」
って、また美夜姉に説教されそうだな…。
でも、お前が働くこのビルでダンスを習うのは悪い気はしないぞ…。
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あくまでメモなんだからね!
須賀倫太郎(すが りんたろう)
人間年齢25歳。
種族 スプリガン
スプリガンはアイルランド神話に登場する妖精。
人間界と妖精界の境目を警護したり、妖精の秘宝を守護する。
本来はブラウニーと同じく小さな身体の妖精だが、巨大化して人間を怖がらせる能力がある。
倫太郎は人間界に憧れて妖精界を飛び出すも、就職難に苦しむ。半年前に漸くこの警備会社に合格する。
生真面目かつスプリガンならではの警戒能力で職場の評価はまずまず。
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倫太郎が外に居てくれたら安心だ。
でも、一体誰が陽菜や他の女の子のタオルを…?
そんなに魔力や身体能力があるなら、もっと大きな犯罪が出来るんじゃねぇのか?
「お嬢ちゃん…。余計な詮索はしないことだ…。俺は『海神リバイアサン』を自由に操れるんだぜ。こんな風にな。」
(しまった!既に更衣室に潜んでやがったか!)
「おい!倫太…。グゥ…。」
「これは俺からの懲らしめだよ。」
声の主の姿は見えない。
代わりに水がピシャンと跳ねる音が聞こえたと思った途端、私の四肢と口は得体の知れない水の塊に自由を奪われた。
まさか…最強生物リバイアサンを使役するなんて…?
ヤバい、口を塞がれたら助けも呼べない。
このまま窒息死させる気か?水のロープで動きを封じたつもりだろうが…。
「人間化解除!」
身長18センチの小人妖精に戻ったおかげで、身体と水に隙間が出来た!
逃げるなら今だ!
「倫太郎!倫太郎!犯人は中だ!」
扉を開ける為に再び人間になったら、服が脱げて全裸を見られた