「そうそう、エレベーターは誰でも最初はびっくりするわよ!
あと、やっぱりFAX!」
「あ~わかる!あれ絶対紙がテレポートしたと思うわよね?」
『私は未だに電話が苦手です。不死鳥に変身したら話せるけど、鳥の手じゃ受話器持ちにくいです。(;_;)。」
沙代理ちゃんの話はとても面白いし、明日香さんのイラスト入りの筆談はとても心が和んだ。
いつの間にか御子神さんとグラシャ=ラボラスそっちのけで、女三人での
「人間界あるある」
で盛り上がっていた。
みんな異種族として人間に化けて社会に溶け込んでいるんだから、肩身が狭くて寂しいのは当然だ。
私は自分が王明さんの浮気相手だったことを知り悲しい気持ちでいっぱいだった。
復讐とまでいかなくても、せめて一言謝ってくれたのを確認してから別れたかった。
でも…その気持ち自体が未練だし、執着だよね…。
沙代理ちゃんのモテ遍歴や、明日香さんと井成さんの距離を保った大人の付き合いを聞いてたら…私って重いな…。
きっと王明さんに奥さんが居なくても、私がこんなだからいつか足を引っ張ってエリートコースの邪魔してたかも…。
うん、そう思いたい。
奥さんは関係ない。
私は王明さんを出世させたという手柄を胸に、彼の背中見届けて何も言わず、何も告げず身を引こう。
グラシャ=ラボラスや御子神さんと契約する必要はない。
王明さんとも別れではない。別れなんかであってはいけないのだ。
だって…これは雇用契約が満了しただけなんだから…。
「あ、あの皆様、本当に楽しい時間をありがとうございます。
グラシャ=ラボラス、御子神さん。
お忙しい所すみませんでした。
私、もう大丈夫ですから。
失礼します。
沙代理ちゃん、明日香さん。
今度絶対、店内コンサート聞きに来るからね。」
「ありがとうございます!
また来てくださいね。」
『こちらこそ人間界で頑張ってる真利子さんに元気貰いましたV(^-^)V』
みんなに見送られながら、幸せな気持ちで店を出ようとすると…。
「御子神と俺からの気持ちだ。」
と、ジョニー・デップ似の人間に変身したグラシャ=ラボラスが小さな紙箱を手渡してくれた。
パティシエでもある御子神さんが、私の大好きなイチゴのショートを入れてくれてるのは予想できた。
でも、箱の中にグラシャ=ラボラスの直筆の手紙と電話番号が入ってたなんて、夜に自宅で開けるまで予想出来なかった。
私は受話器を握ってた